拗らせスターと嘘な恋

 葉山琉偉(はやまるい)――そのうち芸能界デビューするんじゃないかと噂される三年の一軍男子。

 演劇部の副部長を務める彼は、春の新入生向け公演でヒロインに一途な当て馬騎士を演じていて、それはもう叫びたくなるほどかっこよかった。

 当て馬って、どうしてあんなに魅力的なんだろう。

 特に最後のヒロインを見送るシーン。完璧に作った笑顔が、一瞬悲しみに揺らぐシーンが堪らなく切ない。

 姉の影響で少女漫画が大好きな僕は、家に帰ると「あー、かっこ良かった! どうか幸せになってくれ〜」と昂る気持ちのまま、騎士マルローの絵を描きまくった。

 そう。僕は典型的なオタクだ。猫背だし、暗いし、喋るのも苦手で、前髪を伸ばして人との関わりをできる限り避けている。はずだったのに――。

 ――えっ。これ今どういう状況!?

 どういうわけか、ある日、漫研の部室に引きこもっていた俺のもとに、光り輝くイケメンが訪ねてきた。
 
 明るい金髪に色素の薄い目。劇の時と違って前髪は下りていて、自分と同じ学校の制服を着ているけれど、間違いない。マルロー様のご尊顔が目の前にある。

 夢なら覚めないで。いや、心臓もたないからやっぱ覚めて。そんなことを思いながら頬をつねると、しっかり痛かった。

「君が市原理人(いちはらりひと)クン?」

 壊れたおもちゃのようにきごちなく頷くと、騎士様はニヤッと笑って衝撃のひと言を口にする。

「俺と付き合ってくんない?」