隙間(スキマ)の桐谷さんは笑わない

 午後の仕事を再開しようとSlackを開くと、未読のメッセージが一つ。しかもオープンチャンネルじゃなくて、DM。送り主を見て、息が止まる。
 桐谷澪。
 ――え、なにこれ。私宛?
 クリックすると、たった一行。

「次の土曜は外苑前のイベントの搬入に行く。まだ空いてるみたい。」

 …………え? いや、え!? っていうか。これ、どういう意味?
 「空いてるみたい」って、まさか――私を誘ってくれてるってこと!?
 頭の中で警報が鳴る。
 落ち着け、花岡美桜。逆かもしれない。「私は外苑前のイベントの搬入に行くから、お前は来るなよ」ってこと。じゃあ「まだ空いてるみたい」って、どういうこと!?
 ちらりとPC越しに桐谷さんを見ると、仕事モードの無表情でカタカタとキーボードを叩いているだけだった。
 ――やっぱり、土曜の桐谷澪は幻じゃなかったんだ。
 私はこっそりスマホを取り出し、タイミーを開いて“外苑前 搬入”で検索した。