月の裏側に行ってみたい。season2

「初めて診断が下った時、

 俺は、
 理由が分かってホッとした。
 
 だけど、
 親は、泣いたんだ。」



――「お前も、親泣かせるのか?」


この言葉は、
いつか大切な人が出来た時、
伝えようって心に決めてた。


俺と心が通じた瞬間から、
課せられるリアル。


時代は変わったっていうけど、
そんなに甘くはない。



恋人として紹介する時、

デートで手を繋いでる時、

カフェで
食べ合いっこすることすら、

有名人でもないのに

“見られる”ことが始まる。



俺は
街に出かける度、

気づいた人たちが

そっと、
耳打ちする瞬間を

たくさん見てきた。



もう気にすることも
めんどくさくて

お好きにどーぞ。

って
思ってる。


だけど、
隣に立つお前は

きっと――怒るだろ?

それに、
悲しむよな。

あと……

元気づけようとするかもな。


だけど、そんなこと、

俺は
必要としていないんだ。



皆が特別視したとしても

俺とお前は、

“スタンダード”で居たい。



自分で言うのもなんだけど。

難しいんだよ、これってさ。



そのリアルを伝えることは、

俺からのハグなんだ。


朔なら、
お前なら、


――この重さに耐えられる。


だから俺は、
痛いほどのハグを
お前にしたんだよ。


感情に任せて、

あの場で、

お前の告白に頷くこともできた。



――でも、それはフェアじゃない。


お前には、

誠実でいたい。


それが結局、

俺を助けることにもなる。




朔は、
このリアルを


“持ち帰らせてください”

って言った。


考えたい、とか

なんでそんなこと言うんだ、

じゃなくて。


“持ち帰らせてください”って。





部屋の窓際。

俺には珍しく、

肉眼で空を眺めている。


いつも
寝転んで
空を眺めてる朔。


朔から見えてる世界を、


俺も、

ただ感じたくて――。




朔。

お前、今どうしてる?



―――――



勉強机の灯りの下、

止まったまま
動かないシャーペン。


「あー、もういいや。無理。」



開いたノートの上で、

シャーペンが転がる。





「朔ーっ!
 お風呂入っちゃってー!」



「今行くー。」





風呂、最高!!

湯船から上がる湯気に、
目を閉じる。



『お前も、親泣かせるのか。』



然の顔が浮かぶ。



バシャッ!

「ふぅ……。」
両手で顔を拭う。


湯船に身体を沈め、

天井を仰ぐ。




「朔~、ちょっと入るね。」

浴室ドアのガラス越しに
母が見える。

「着替え置いとくね。」


「サンキュー。」


――パタン。
パタパタパタ……


母の足音に耳を澄ます。



「――親、泣かせるのか。……か。」



ザブンッ!
顔を湯船に浸ける。

勢いよく
手のひらで顔を拭く。


「泣かせるかっていうの!

 いざ、参りますか。」


さっとシャワーを浴び、
外に出る。



鏡に映る自分と、
目を合わせる。

じっ……


「待っとけ、然。」


迷いは、――ない。





髪を拭きながら、
リビングへ向かう。




ガチャッ。


「――なぁ、母さん?」