hugme 蛍光ピンクの蝶

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  カメラが切り替わり、グラウンドの全景が映し出された。
  授業内容はテニスらしい。テニスラケットを持った子供たちが、グラウンドをコロコロと走り回る様子を、モニター越しに食い入るように見つめていた。

  あの子――ミユリはどこだろう。

  灰吹カレン。三十九歳、職業は翻訳者。子ども出資制度に登録してから、もう十五年になる。出資している子どもは三人。だが、どうしても目が向いてしまうのはミユリだ。一番高額な出資をしているのも、彼女だった。
  細い足、少し猫背気味の立ち姿。誰よりも慎重に周囲を窺っているのに、カメラに向かうときは笑顔を忘れない。数百人の大人たちが「親」として見守る中、彼女はいつだってその視線を背負いきろうとしている。
  ミユリは背が高く、肌の黒いクラスメイトとチームになり、ダブルスの試合をするらしい。モニターから目が離せなくなる。

  あの子に何かあったらどうしよう。
  あの子は私たちの、いや、私の子どもだ。

  ボールが弾むたびに心臓が跳ねる。ラケットを振るたびに、私は息を合わせるように肩を動かしてしまう。怪我をしないでほしい、しっかり授業を受けてほしい、そしてすべての体験を自分自身の糧としてほしい。
  ミユリの前にテニスボールがやってきて、彼女がラケットを構えたとき。

  ――ぽんっ。

  画面の端に、チャットの通知が浮かんだ。仕事先の編集者からだ。

「先方、修正が急ぎだそうです。本日中に再納品、可能ですか?」

  思わず舌打ちしそうになる。そんな暇はない。いま大事なのは、コートの端でラケットを構えているミユリの姿なのに。
  けれど、視線を外さざるを得ない。二つのモニターを並べ、片方で英文を開き、もう片方で配信を流し続ける。

「わかりました。夕方までには送ります」

  そう打ち込みながらも、指先は落ち着かない。仕事を始めても、耳はモニターから離れない。いつの間にか、ミユリたちの試合は終わってしまっていたようだ。
  一つ息を吐き仕事に向かおうとするも、打球音や子どもたちの声がかすかに聞こえるたび、心がそちらに引っ張られてしまう。