hugme 蛍光ピンクの蝶

  校舎の窓ガラスはいつも磨き上げられ、朝の光を跳ね返している。敷地に入ると、芝生の緑と花壇の色が目に鮮やかで、まるでどこかの展示場みたいだ。
  カードキーをかざすと、ゲートが軽やかな音を立てて開いた。背後では監視カメラが、今日の入場者記録を確かめている。

「おはよう、ミユリ」

  教室に入ると、クラスメイトのリオがすぐに声をかけてきた。彼女は「お父さん」から贈られたらしい髪留めをつけていて、光が当たるたびに小さくきらめく。

「おはよう。レポート大変じゃなかった?」

「うん、全然わかんなくて、AIにいっぱい手伝ってもらっちゃった」

  くるくると回るような愛らしい笑顔。たくさんの「両親」たちから、たっぷりの愛を受けているのだろう。リオの産みの両親は有名な俳優とアイドルだったという噂を聞いたことがある。彼女のとろけるような笑顔を見れば、なるほどと思う。
  窓際の席に座ると、別のクラスメイトが話しかけてきた。日に焼けた肌に短く刈り込んだ髪がボーイッシュな印象のアンズだ。

「ねえ、今日の体育、外でやるんだって。ドローンで配信されるんでしょ」

「本当?」

「うちのお母さんが楽しみにしてるって。体育の配信って人気だよなあ」

  彼女が言う「お母さん」が、血のつながりのある人か、出資者の一人か、すぐには判断できない。でも、ここでは誰もいちいち区別しない。

「うちは体育頑張らないといけないからさー」

  彼女は白い歯を見せ、笑った。彼女の産みの両親は、世界的なスポーツ選手だ。もちろん彼女の「両親」たちは、アンズが産みの両親を超える選手になることを期待している。

「じゃあ、しっかり走らなきゃだね」

  私はアンズに微笑みかけながら、ほんの少しだけ胸の奥が冷たくなった。
  大人たちの期待を受け止め、望まれるままに成長し、何者かになれるのだろうか。私に両親の才能は受け継がれているんだろうか。