帝都のエリート退魔師は婚約者の溺愛に気づかない

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「素敵なお店ですわね」

 洋風建築のレストランに着いた神奈は、案内された部屋の中を見渡しながら、そう言った。

 二人で利用するには十分すぎるほどの広さがある個室で、部屋の中央にはテーブルクロスがかけられたテーブルと椅子が二脚、床には赤絨毯が敷かれている。ステンドグラスがはめ込まれた大きな窓の外に広がる庭木の緑が美しく、神奈好みのインテリアである。

「気に入ってもらえてよかったです。神奈さんが好きそうだなと思って選んだので」

 対面に座る御幸は、両手を組み頬杖をついてニコニコと笑顔を振り撒きながら神奈のことを見つめていた。今日初めて御幸を真正面から見た神奈は、動悸がする胸を抑えながら「あ、ありがとうございます……!」と礼を述べ視線を逸らす。

 心の奥底に溜めに溜め込んだ激重な恋心を知ってもなお、好きだと言ってもらえたことは、神奈にとって幸いだった。だが、だからといって、婚約者を前に平常心でいることは、まだまだ難しいもの。

(晴れて両想いになったけれど、どんな顔をして御幸様を見ればいいのかしら……!)

 こうやって二人だけで会食をするのは何も今回が初めて、というわけではないのだが、片想いだと思っていた「これまで」と、両想いになった「今」とでは心の持ちようも異なる。

 そのことを変に意識してしまった神奈は、両手を頬に当てながら、うんうんと一人唸って頭を抱えていた。すると――。

「神奈さん」

 名前を呼ばれ、ふと顔を上げれば流麗な双眼と目が合った。

「同僚の朝霞君とは目を見て会話できるのに、婚約者の僕とはできませんか」

 小首を傾げながら、そう問うてきた御幸に神奈はハッとした。

(私ったら、自分のことでいっぱいいっぱいでしたけれど、冷静に考えたら御幸様に対して、とんでもなく失礼なことを……?!)

 そう思って「申し訳ありません……!」と慌てて謝罪すると、御幸は「別に怒ってるわけじゃありませんよ」と苦笑を浮かべた。

「でも……そうですね。僕たちは婚約者同士で、いずれ結婚して夫婦になるわけですから。いつまで経っても、このままというわけには、いかないでしょう」
「え、ええ」
「だから神奈さん、僕と『特訓』しましょうか」

 にこりと麗しい微笑みを浮かべながら、そう提案してきた御幸に神奈は目をパチパチと瞬かせた。