京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~

「おお~これは不思議じゃ! 本当に魔力もなしに召喚をしておる。それにこのような文字も見たことがないのじゃ!」

 エルネの前で実際に霊符を発動させたり式神を召喚したりすると、エルネは目を輝かせながら驚いている。魔法に詳しいエルネから見ても、やはり魔法と陰陽術は異なるようだ。

『……我が主、この者はいったい?』

「街で知り合ったエルネだ。彼女は第二級冒険者かつ凄腕の魔法使いで、陰陽術のことについて教える代わりに魔法や魔道具のことを教えてもらうことになったのだ。エルフという種族で、こう見えて我よりも遥かに年上なのだぞ」

『左様ですか。初めまして、エルネ殿。式神のビャクと申します』

「エルネじゃ! むむむっ、言葉を解し、知性もある。魔物や精霊のようにも見えるのじゃが、魔力を一切持たぬとは不思議じゃのう。すまぬが少しだけ身体に触れさせてもらってよいかのう?」

『え、ええ……。構いませんよ』

 今日はこのあと昨日と同様に海へ行きゲンを顕現させるので、今回はビャクを顕現させた。

 普通の者は最初ビャクを見ると、身体が大きく鋭い歯と牙を持った白虎のビャクを怖がるのだが、エルネはそれよりも式神への興味が強いらしい。ビャクに許可を取って前足に触れている。

『……ご主人、やっぱりこの人ちょっと変だよね』

「……さすがにセイには触れさせられぬな」

 エルネは目を輝かせながら嬉々としてビャクの身体をくまなく調べている。まあ、陰陽術の一流の使い手の中にも変わり者は多くいたものだ。

 セイのやつが同じことをされたら間違いなく暴れるであろうから顕現させるのはやめておく。そしてビャクが今以上に嫌がるようであれば止めるとしよう。



「ふ~む……やはり魔法とヤコウの使う陰陽術は根本的に異なるようじゃな」

「そのようであるな。似たようなことはできるようであるが、様々な違いがあるようだ」

 エルネはしばらくビャクを観察し、そのあとは同様に我の霊符や形代などを観察した。そして我もエルネの魔法を間近で見て、魔道具などの詳しい説明を聞く。その結果、魔法と陰陽術にはいくつか異なる点が確認できた。

「もしかするとその五行力とやらを周囲から取り込んでいるため、魔法よりも出力が高いという可能性はあるのう」

「うむ。そしてこの世の者は魔力というものを多少なりとも宿しているため身体が頑丈になるというエルネの推論は正しいのかもしれぬ」

 魔法というものは自身の魔力を体外に放出するという認識である。使った分の魔力とやらは時間が経つにつれて回復していき、魔力を使いすぎると吐き気や頭痛がしたりと体調にも影響が出るらしい。対する陰陽術は霊符や式などを媒介とし、自身と周囲の五行力を合わせて使うという認識だ。

 そのため、式神の発する術の威力や霊符の力が強いのかもしれないとエルネから言われた。以前より我が感じていたようにこちらの世の者の身体が丈夫であるというのもその魔力が関係しているかもしれぬらしい。魔力鑑定とやらで魔力が検出できずともこの世の者は魔力を身体に宿しているようだ。我の世にはそもそも魔力や魔法などが存在しなかったからな。

「それにしても霊符や形代なしに魔法を発動できるということには驚いたぞ」

「……妾としては紙に文字を刻んだだけでそのような術を込められることに驚いたのじゃ」

 魔法は自身の魔力を使用することで魔法を発動できる。さらに詠唱をすることによって威力も上がるそうだ。しかし戦闘などで詠唱をするのは実用的ではないため、基本的には魔法名を叫ぶ詠唱破棄によって発動するらしい。確かに我が今まで見た魔法の使い手は魔法名を叫んでいた。威力は落ち、鍛錬は必要であるが魔法名を叫ばず発動する無詠唱というのもあるそうだ。

 陰陽術は式神と契約をする際と霊符や形代に一字一字意味を込めた文字を記し、そこに五行力を込めることで術を使うことができる。どちらかというとこちらの世の魔道具と似ているが、あの魔道具は魔石という物を使用したり、魔法式を特別な素材に刻みこむ必要性があるらしい。

 よく我が言われていた召喚魔法とやらは式神とだいぶ似ていることもわかった。式神と同様に召喚した者と契約を結ぶようだ。魔物使いは実在する魔物と魔法によって契約を結ぶらしい。

「おっともうこんな時間か。随分と話し込んでしまったようだ。レイラ、今日の修行はここまでにしておこう」

「うん」

 魔法と陰陽術のことについてエルネと話していたら随分と話し込んでしまったようだ。

『早く海に行こうよ!』

「うむ、そろそろ昼ご飯の時間でもあるか」

 スーはあちこちを飛び回ったり、レイラの修行の様子を見て退屈そうにしておったな。

「……う~む、まだ聞きたいことも多いのじゃ。昨日のように海で遊ぶのじゃな。妾も一緒についていってもよいかのう?」