京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~

「うむ。すまぬがそなたたちの噂を聞き、先ほどは少し離れたところから観察させてもらっておったのじゃ。ふむ、本当に言葉を喋るとは驚いたのう」

 どうやらこの者の目的は式神であるスーとゲンらしい。他の街でもそうであるが、できる限り人前でスーたちには話さぬようにしてもらっていた。だがそれでも我らは目立つゆえ、どの街でも話す魔物として多少噂されていたのは知っている。

 ……というよりも、まずはこの者の服装を何とかしてほしい。この者は水着を着ているのだが、上と下にとても面積の少ない布があるだけで、他の者よりもだいぶ肌を晒している。もしかすると我らに警戒されぬようあえて武器などがないことを示したかったのかもしれぬがさすがに目に余る。

 まったく、いくら京の都よりもそのあたりが大らかであるとはいえ、若いおなごがそれほど肌を晒すとははしたないぞ。

「そのものたちは普通の魔物や召喚獣とは異なり魔力がまったく感じられぬのじゃ」

「魔力? 確か魔法を使う際に必要な力であったな」

 我がそんな考えをしているのもお構いなしに続けるエルネとやら。魔力とは冒険者ギルドで計測したところ我は持っていないと言われたものか。

「……やはり召喚術師の物言いではないのう。そしてただの魔物使いとも異なる。妾は魔法使いで、魔法にとても興味があるのじゃ。そのものたちを詳しく見せてはくれぬか? もちろんちゃんと謝礼はするぞ?」

「………………」

 どうやらこの者は式神が普通の魔物や召喚獣とは異なることに気付いたらしい。これまでは誰にも気付かれなかったことであるというのにな。この者がただものではなく、我らに対して敵意は感じられぬが、どうしたものか……。

「おっと妾は怪しい者ではないぞ。証拠となるかは分からぬが、これを見てほしいのじゃ」

「……ほう、そなたは第二級冒険者であるのか」

「ええっ!?」

 我の言葉にレイラが驚く。エルネが腰に携えたマジックバッグから見慣れた金属製の札を取り出して我に見せた。まだこの世の文字は読めぬが、数だけは我も覚えている。その冒険者証には第二級冒険者であると記されていた。

 第三級冒険者が一流冒険者であり、その上はそれよりも上の腕を持つ証でもある。もちろん級位が高いからといって安全であると決まったわけではないが、それほど有名な者がおかしな真似をするとは考えにくく、あえて我に冒険者証を晒したことは多少信用できる。

「よかろう、謝礼は不要である。その代わりにエルネには魔法を教えてもらいたいのだが、よいであろうか?」

「おおっ、もちろん構わぬのじゃ!」

 我の問いにそう答えるエルネ。

 式神のことを話すくらいであれば大丈夫であろう。そしてちょうど我もこの世の魔法というものを詳しく知りたいと思っていたところであった。先日の悪党どもが使っていた魔法程度であれば問題ないが、例の闇の魔道具とやらは少し肝を冷やした。あのような魔道具が存在する以上、魔法や魔道具のことを知っておいて損はない。

 式神のことを察したところを見ると、魔法に詳しい者と見受ける。ここは交換条件としよう。



 とりあえずこのような場かつ、このような服装でおこなう話ではないので、一度別れて冒険者ギルドの食堂でおちあった。

 冒険者ギルドには食事をとる場所があり、誰でも使用できる。値段は安くて量は多いのだが、質はそれほどまでではないので、駆け出し冒険者向けといったところだ。とはいえ、さすがにここでおかしな真似を働くとは考えにくいのでこの場にしている。

 エルネはローブと呼ばれるこの世の魔法使いが着ている長めの服を着ていた。

「ふ~む……。魔物のようであるが一切魔力が感じられぬ。式神とは不思議な存在じゃ」

『ご主人、なんかこの子、目が怖いよ……』

 まずはスーのことを見たいとのことなので、エルネはスーの正面に座り、じっくりとスーを観察している。

 エルネには我が別の世から来たことはまだ伝えておらぬが、日の本という国からやってきて、そこには魔法がなく陰陽術というものが存在していると説明してある。

「……我からすれば魔法というものの方が不可思議であるな」

「すごいよね!」

 エルネは我とレイラの目の前に水魔法とやらを使って水の球を出してくれた。我からすれば霊符や式神もなく、このように水や火を出せる魔法の方が不可思議である。

「今度はその霊符とやらも見てみたいのじゃ!」

「それは構わぬが、今日はもう日も暮れたことだし、このような場所で見せるものでもない。続きは明日にせぬか?」

 時間もそうであるが、人の多いこの場で霊符を見せるのはあまりよくない。

 どうやらこの者は冒険者として有名なようで、先ほどからこの席は注目を浴びている。スーや我の格好を訝し気に見られることはよくあったが、それとは比べ物にならないほどだ。この者は有名な冒険者のようだし、警戒はある程度解いてもよいだろう。

「……う~む、仕方がないのじゃ。そういえばそなたたちはどこに泊まっておるのじゃ?」