京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~

「よし、これくらいで十分であろう」

 丘の上で式神たちと共に食事をとってから、オガルノの街近くの森へとやってきた。始めて訪れたミニカムの街付近の森よりも多少手強い魔物も生息していたが、問題なく受けた依頼の魔物を討伐してきた。

 今回受けた依頼は第四級相当の依頼ばかりである。やはり第三級以上の依頼は珍しいようだ。そして第四級となると、そのほとんどが魔物の討伐依頼や魔物の素材目当てで採取などの依頼はなくなるらしい。

 採取依頼も嫌いではないのだが、今回はしばらくこの街に滞在するため、第六級や第五級の冒険者が受けるための依頼までは受けないようにしておいた。ある程度は他の冒険者に配慮することも大事である。

「レイラも早く魔物を倒せるようになりたいなあ……」

「ふむ、もう少し鍛えればゴブリン程度の魔物をひとりで倒せるようになると思うゆえ、もう少し我慢するのだぞ」

『レイラ殿は十分な早さで強くなっていますし、焦りは禁物ですよ』

「うむ、ビャクの言う通りである。たとえそれほど強くない魔物であっても、相手はこちらを害そうと襲ってくるので焦りや油断は禁物だ」

「う、うん!」

 ビャクの背に乗って街へ戻りながらそんな話をする。

 レイラは早くひとりでも魔物と戦える力をつけたいようだが十分な早さで成長している。霊符の力もだいぶ上がり、もう少しすれば魔物と戦えそうであるし、形代の方もあと少しで自身の視覚を移せそうである。焦らずにこのまま精進していけば問題ない。



『夜のご飯もおいしかったねえ~』

「いつもこんなにおいしいご飯が食べられて罰が当たっちゃいそうだよ」

 宿へ戻ってきて晩ご飯を食べた。今日の宿の料理も昨日に引き続き美味であった。部屋へ戻り、明日のことについて話し合う。

「明日は久しぶりに1日休みとするか。ここ最近は毎日忙しくあったからな」

『賛成、賛成~! たまにはゆっくりと羽を伸ばそうよ』

「うむ、休息は大事である。ただ修行だけは積み重ねもあるので1刻ほど行うがな」

『……ご主人、たまにはちゃんと休まないと駄目だよ』

 休息も大事であるが、修行は毎日続けることに意義がある。休息日でもほんの少しだけは続けなければな。

「レイラは全然大丈夫! もっと修行してもいいくらいだよ」

「休息も修行のうちであるぞ。レイラは明日何をしたいのだ?」

 レイラが修行に乗り気なのは嬉しいところだが、スーの言う通りあまり根を詰めすぎても身体を壊してしまうからな。むしろレイラのやる気がありすぎるゆえ、あえて息抜きの時間を作ってやることにした。

 そしてこれまでレイラは自分からあまりしたいことを言い出さないこともわかっている。童らしく、やりたいことは遠慮なく言わねばな。

「……ええ~とね、レイラは海で遊んでみたい!」

『おいらも! なんか海で遊ぶための道具とかもあったよね!』

「それもよいな。よし、明日は海でのんびりするとしよう」

「やったあ!」

 両手を挙げて喜ぶレイラ。やはり童は楽しそうにしている姿がよく似合う。

 昨日この街に来た際に訪れた浜辺とは別の場所に魔物が少なく安全に海に入れる場所があるらしいので、そこへ行ってみるとしよう。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「うわあ~すっごいね!」

『いやっほう~!』

『近くで見ると本当に広いわね~』

「みな、あまりはしゃぎすぎるでないぞ」

 翌日、朝食をとり、少しだけレイラの修行をしてから海へとやってきた。

 こちらの浜辺は人も多く、屋台なども出ている。我らと同じように海を見に訪れた者の多くがここでのんびりと過ごすようだ。ここに魔物が来ることはほとんどないらしいが、念のためにゲンを顕現させている。

 スーとゲンが普通の魔物と間違えられぬよう、他の者が少ない端の方へ移動してきた。

「それにしても、あのはしたなき()()とやらはなんとかならぬものか……」

 まだ少し肌寒いのだが、水の中に入れぬほど寒くはないので海の中へ入っている者も多い。この世では海や湖で泳ぐ際は水着という物を着て水の中に入るらしい。

 問題はその水着とやらがとてもはしたなきことだ。あそこにいるおなごなど、ほとんど肌が隠れていないではないか!

 確かにこれまでも少し思っていたのだが、この世では京の都とは異なり肌を晒すことにそれほど抵抗がないらしい。冒険者ギルドでもだいぶ肌を晒した者が多くいた。我の世では愛する者以外に肌を晒すことなどほとんどなきことであったが、世が変わればそのあたりの認識も変わるものか……。

 我はそれほど海に入る気はなかったゆえ水着とやらは持ってきていないが、レイラの分は購入してある。もちろんそれほど肌を晒さない物を選んだぞ。童であるレイラに邪な考えを持つ者はおらぬと思うが、変な者が寄って来ぬよう気をつけねばな。