京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~

「セイ、そこまでだ」

 セイが禍津之風を解除すると、巨大な竜巻が消え、ワイバーンが地に落ちる。

 そこからワイバーンが動く様子はない。思っていたよりもあっさりと決着がついたようだ。

『ちっ、あんまし歯ごたえがなかったぜ。まあ、すばしっこいのは面倒だったけどよ』

「逆鱗旋風斬では捉えられぬ様子であったからな。これでこの道を通る者が襲われずに済むであろう。そういえばドラゴンという魔物はこのワイバーンよりも強く、より美味であるらしいぞ」

『本当かよ! そんじゃあそいつも狩りに行こうぜ!』

「いずれは味わってみたいところであるが、ドラゴンとやらはとても珍しくて遭遇すること自体が難しいらしいな」

 空を飛び回るうえセイの逆鱗旋風斬を避ける相手であったし、確かにこれまで相手にしてきた魔物とは一味違っていた。早めに倒すことができてなによりであった。

 ドラゴンはワイバーン以上に強いようなので、相手をする際は我も心してかからねばならぬな。

『さすがセイ兄だよ!』

「セイちゃん、すっごくかっこうよかったよ!」

『おう。チビ助、またうまい飯を期待しているぞ』

「うん!」

 ワイバーンの表面の皮や鱗はセイの禍津之風によってボロボロになってしまっているが、中の肉は問題なさそうだ。傷の少ない方が冒険者ギルドでは高く買い取ってくれるらしいが、空を飛び回る魔物を傷付けずに倒そうとすると危険であるから、討伐を優先した。

 我らにとってはワイバーンの討伐と肉の確保が大事であったので、それで十分である。ワイバーンは他の魔物とは異なり解体も少し難しいらしいので、そのままマジックバッグで回収して冒険者ギルドで解体してもらうつもりだ。

 他の魔物の数体分の大きさがあるので、マジックバッグの容量もだいぶ埋まってしまったな。このマジックバッグとやらはとても便利であるが、ある程度容量が決まっている。レイラに持たせてもよいかもしれぬし、もうひとつ購入してもよいかもしれぬ。オガルノの街へ到着したら見てみるとしよう。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「おお! あれが海とやらか!」

『すっげ~本当に水たまりがどこまでも広がっているよ!』

『これはすごいですね!』

「うわあ~とっても大きくて綺麗だね!」

 ワイバーンを討伐した翌日、ついに目的地であったオガルノの街へ到着した。

 丘の上から見下ろすと、そこには視界いっぱいに広がる青色が果てしなく続いていた。我がこれまで見てきた川や水たまりとはまるで異なっている。先の見えぬ水面が陽光を受けてきらめき、まるでこの世の終わりを否定するように伸びていた。

 スー、ビャク、レイラ、誰しもが海を目の前にして驚いている。こんなにも大きなものがこの世にあったのかと、我はただ呆然と見つめ続けることしかできなかった。

「ふ~む、いったいどうやってこれほど大きな水たまりができたのか不可思議であるな。たとえどんなに雨が降ってもこうはなるまい」

「海はずっと昔からあったみたいだね。ずっと雨が降らなくても全然干上がらないみたいだよ」

「……なんと」

 塩辛い味がするようだし、ただの水たまりとは異なるのかもしれぬな。自然とはかくも不可思議なものである。海は我の世にもあったようだが、まさか別の世に来て初めて海を見ることになるとは思わなかったぞ。



 しばらく丘の上から海を眺めたあと、大きな海のそばにあるオガルノの街へ移動する。

 これまで見てきた中でも一番大きな街で、その門はとても高く分厚い物であった。建物の多くは灰色に統一されている。もしかすると海から流れて来るという潮風とやらに強い材質なのかもしれぬ。

 街へ入る列に並ぶといつも通り他の者に注目されてしまったが、冒険者ギルド証を見せるとすぐに街へ入ることができた。やはりこの冒険者ギルド証があると街に入るのは楽でよい。時刻は昼過ぎのため、まずは冒険者ギルドへよってから宿をとることが優先されるのだが、まずは海とやらを間近で見たいため、街の奥へと進んでゆく。

「ほう、近くで見るとより広く感じられるな。ここからでも海の果てがまったく見えぬ……」

『ぺっぺ、うわあ、海って本当にしょっぱいよ!』

「むっ、本当だ……」

「うん、しょっぱいね!」

 浜辺とやらにいくと、そこには真っ白な砂が広がっていた。この辺りでは泳ぐこともできるらしい。その奥の方には岩場になっており、その先には様々な大きさの船が見える。

 京の都では川を渡す小さな船しか見たことはなかったが、この世の船は随分と大きな物もあるのだな。魔道具や建物の造りを見てもよくわかるが、やはり我の世の技術よりもこの世の方が進んでいるらしい。

 スーは早速海の水を舐めているので、我とレイラも試してみると本当に塩辛かった。これだけの水たまりがなぜ塩辛いのかも不可思議である。