京の守護から解放された最強おっさん陰陽師、式神や弟子と共に旅をする。~異世界で【陰陽術】は常識の範囲外~

「いでよ、青龍! 急急如来律令」

 五芒星を描き、東の守護神である青龍のセイを顕現させる。

『おっ、今回は早えじゃねえか! よっしゃあ、敵はどこだ!』

「今回は争いではないから落ち着くがよい」

 顕現するなり、敵を探しながら大きな声で叫ぶセイ。……相変わらず喧嘩っ早い式神である。

『セイ兄、久しぶり~』

『スーじゃねえか。相変わらずおまえはちっこいな』

『セイ兄がでっかいだけだよ!』

 悪党どもを成敗した時にスーはレイラと一緒に離れた場所にいたから2人が会うのは久方ぶりだ。ちなみにセイやゲンが兄や姉というわけではなく、単純にスーがそう呼んでいるだけである。

『それでヤコウ、いったいなんの用だよ。用事がねえなら帰るぞ』

「……セイは相変わらずであるな。先日はセイのおかげで童たちを救うことができたぞ。今日はその礼と我の弟子となったレイラを紹介するためにそなたを呼んだのだ」

「レ、レイラです! ドラゴンさん、初めまして!」

 レイラが興味津々といった様子でセイを見る。

 見た目や言動など少し怖そうに思えるのだが、それよりも関心の方が勝っている様子であるな。そういえばあの悪党どももセイのことをドラゴンと言っていた。この世では龍に近い生き物がいるらしい。

『ヤコウが女の弟子を取るなんて初めてだな。それに俺様を目の前にしてビビらないとはいい度胸をしているぜ』

「そもそもここは我らがいた世とは異なって陰陽師がいないからな。まあ、その辺りもあとで説明しよう。レイラ、そういえばあの悪党どももセイのことをドラゴンと言っていたが、それは龍と同じ魔物なのか?」

「ええ~とね、ドラゴンは物語に出てくるすごく強い空飛ぶ魔物なんだよ。レイラが聞いたことのあるドラゴンは赤くて火を吐く強い魔物で、村とかを滅ぼしちゃうの。悪いドラゴンさんを倒した冒険者の人はドラゴンスレイヤーって呼ばれるんだ。良いドラゴンもいて、ドラゴンに乗る騎士さんやドラゴンを召喚できる召喚術師さんは英雄なんだよ!」

「ふむ、この世で龍はそういった扱いなのだな」

 どうやら強大な存在として扱われているようだ。京の都で龍は式神として顕現させることができるがある程度の腕は必要であったため、強大な存在であるところは同じか。どちらにせよ街中でセイを顕現させるつもりはないが、気を付けるとしよう。

「さて、これはレイラが作ってくれた料理だ。この世の食材は京の都のものよりも美味であるから期待するといい」

『そういやそんなことを言ってたか。どれどれ』

 先ほどレイラが作ってくれた料理の載った皿をセイの口元に運んでやる。

『おおっ、こいつはうめえ! やるじゃねえか、チビ助!』

「よかったあ~」

 セイがおいしそうに料理を食べる。セイは京の都ではあまり顕現させられないこともあって、共に食事をとるのは久しぶりだ。レイラもセイが喜んで料理を食べているところを見て嬉しそうである。

『味はうめえが、量が少ねえな。もっとねえのかよ?』

「今回は試しだからな。気に入ったようなら、今度はもっと多くの料理を準備しておくとしよう」

『おう、頼んだぜ。チビ助、うまかったぞ』

「うん! もっとおいしいご飯を作れるように頑張るね」

 セイは身体が大きいこともあり、他の式神と比べてよく食べるのだ。ビャクやゲンもレイラの料理を気に入ったようだし、今後はより多くの食材を準備しておくとしよう。幸いこの世は魔物が多く、今日移動してきた際もそこそこ大きな魔物とすれ違ったことだし、食料の確保は問題ないだろう。

 その分魔物の解体作業や料理などレイラの負担は増えてしまうので、式神たちにも任せるとしよう。……我も多少は手伝うとするか。



「それではこれより陰陽術の修行を始める」

「はい!」

 食事を終え、セイを還した。いよいよレイラの陰陽術の修行を開始する。

「陰陽術は地を表す陰の気と天を表す陽の気である陰陽(いんよう)二気から成り立っている。この世の一切の万物は陰陽二気によって生じ、それぞれが木・火・土・金・水の要素にわかれており、この五つの気が絶えず循環することによって自然界の秩序が保たれているわけだ。陰陽術はこの力に干渉する力となる」

「……スーちゃんは火の要素を持っているのかな?」

『うん、正解だよ』

「やったあ!」

「レイラの言う通り、スーは火の要素を持つ式神である。だが、式神は特別な契約というものを結ばなければ顕現させることができぬ。まずは霊符や形代を自在に使えるようになることが目標となる」

 式神を顕現させるのは陰陽師としてある程度腕を磨いてからだ。まずは五行力を練り、霊符や形代に込める修行が最初である。

 はたしてこの世の者が五行力を扱えるのか気になるところであるな。