「ザリッ!ザッ!」
土のコートを蹴る音が聞こえた。
続けて、ボールをたたく短く鋭い音。
ドリンクを作る手を止めて顔をあげると、光を纏ったような千秋の背中が見えた。だれよりも目が惹きつけられる。
公式戦が近いから、最近はもっぱら模擬試合だ。
あれから俺の頭を支配するのは、千秋が言ってくれた言葉と声、いつも見ていた背中。
初めての気持ちへの高揚感で、心臓がドキドキして眠れない日を重ねた。
「晴人」
いつの間にか千秋が隣に立っていて、さりげなく肩が触れる。
あまりの近さに思わず後ずさり、心臓を守るように胸の上に両手を置く。
一瞬の瞬きの後、千秋はハッとなにかに気づいたような顔をした。
「ど…どうした?ドリンクはまだ……」
今までどんな顔で、どんな声で話してたのか分からなくなり、かなりぎこちない話し方になってしまう。
千秋は俺の目を見て「ふっ」と微笑んだ。
「試合近いだろ?」
帽子を外して、こめかみの汗を袖で拭う。
その仕草にさえ胸が高鳴るなんて、これはもう重症だ。
「う…うん、もう2週間後だね」
「俺、部活が終わったあと自主練するから。練習相手は晴人がやってね」
えぇ?!俺?!
嬉しいけど……予想外の誘いに言葉が出てこない。すると千秋が目を見開いて言った。
「あれ?もしかして早く帰らないといけない?」
その瞬間、俺の脳が動き出した。
早く答えないと!「やっぱり他の人に頼む」なんて言われたら…!
「あ、いや、全然大丈夫!……ていうか、俺でいいの?」
千秋はにっこり笑って
「晴人がいいの」
と言った。
俺の心を浮かせられるだけ浮かせて、その背中は離れていった。
近頃は、日課のようにラケットを握っても、それを振ることはない。
嬉しかった。
またテニスができる。しかも、好きな人と。
夢見心地で、つい鼻歌がこぼれた。
土のコートを蹴る音が聞こえた。
続けて、ボールをたたく短く鋭い音。
ドリンクを作る手を止めて顔をあげると、光を纏ったような千秋の背中が見えた。だれよりも目が惹きつけられる。
公式戦が近いから、最近はもっぱら模擬試合だ。
あれから俺の頭を支配するのは、千秋が言ってくれた言葉と声、いつも見ていた背中。
初めての気持ちへの高揚感で、心臓がドキドキして眠れない日を重ねた。
「晴人」
いつの間にか千秋が隣に立っていて、さりげなく肩が触れる。
あまりの近さに思わず後ずさり、心臓を守るように胸の上に両手を置く。
一瞬の瞬きの後、千秋はハッとなにかに気づいたような顔をした。
「ど…どうした?ドリンクはまだ……」
今までどんな顔で、どんな声で話してたのか分からなくなり、かなりぎこちない話し方になってしまう。
千秋は俺の目を見て「ふっ」と微笑んだ。
「試合近いだろ?」
帽子を外して、こめかみの汗を袖で拭う。
その仕草にさえ胸が高鳴るなんて、これはもう重症だ。
「う…うん、もう2週間後だね」
「俺、部活が終わったあと自主練するから。練習相手は晴人がやってね」
えぇ?!俺?!
嬉しいけど……予想外の誘いに言葉が出てこない。すると千秋が目を見開いて言った。
「あれ?もしかして早く帰らないといけない?」
その瞬間、俺の脳が動き出した。
早く答えないと!「やっぱり他の人に頼む」なんて言われたら…!
「あ、いや、全然大丈夫!……ていうか、俺でいいの?」
千秋はにっこり笑って
「晴人がいいの」
と言った。
俺の心を浮かせられるだけ浮かせて、その背中は離れていった。
近頃は、日課のようにラケットを握っても、それを振ることはない。
嬉しかった。
またテニスができる。しかも、好きな人と。
夢見心地で、つい鼻歌がこぼれた。

