四月の終わり。
放課後の教室には、部活に行く人たちの声がまだ少し残っていた。
「はぁ……」
私は机に突っ伏した。
数学のテスト、終わった。たぶんいろんな意味で。
「そんな死にそうな顔する?」
顔を上げると、隣の席の結城が笑っていた。
「うるさい。結城は頭いいからいいじゃん」
「別に普通だって」
そう言いながら、結城は私のテストをちらっと見る。
「うわ、これやば」
「見るな!」
私は急いでテストを隠した。結城は声を出して笑う。ほんとむかつく。
結城悠真は、クラスでもわりと人気ある男子だ。背も高いし、サッカー部だし、女子とも普通に話す。でもちょっと意地悪。
私はそんな結城が、少し苦手だった。
……たぶん。
「てかさ、今日委員会あるよね」
「あ」
忘れてた。
私は図書委員だった。めんどくさいから本当はやりたくなかったけど、じゃんけんで負けた。
「結城もだっけ?」
「うん」
最悪だ。
図書室に行くと、先生が言った。
「悪いんだけど、資料運ぶの手伝ってくれる?」
「はい」
結城と二人で段ボールを持って運ぶことになった。
「重っ……」
「ちゃんと持てって」
「持ってるし!」
廊下を歩いてると、結城が急に笑った。
「なんで笑うの?」
「いや、おまえ顔真っ赤」
「重いから!」
「あっそー」
絶対からかってる。
でもその時、結城が段ボールを少し自分の方に寄せた。
「え?」
「そっち重そうだから」
その言い方がすごく自然で、なんかずるかった。
図書室で作業を終えて帰ろうとした時、急に外で雨が降り始めた。
「うわ、最悪」
私は傘を持ってきてなかった。
窓の外を見ながら困っていると、後ろから声がした。
「入る?」
振り向くと、結城が傘を持っていた。
「え、でも」
「家近いじゃん。途中まで一緒でしょ」
たしかにそうだった。
結局、一つの傘で帰ることになった。
雨の音が近くて、なんか変に静かだった。
「……狭くない?」
「おまえが離れすぎなんだって」
「だって近いし」
「今さら?」
結城は少し笑った。
街灯に照らされた横顔を見た時、なんでかわからないけど、急にドキッとした。
その瞬間。
「うわっ」
水たまりで滑りそうになった私の腕を、結城がつかんだ。
「危な」
「……ありがと」
心臓がめちゃくちゃうるさい。
雨のせいなのか、別の理由なのか、自分でもよくわからなかった。
次の日。
教室に入ると、結城がいつもみたいに「おはよ」って言った。
なのに私は、まともに顔を見れなかった。
たぶんあの日から、少しだけ。
結城を見る気持ちが変わったんだと思う。
放課後の教室には、部活に行く人たちの声がまだ少し残っていた。
「はぁ……」
私は机に突っ伏した。
数学のテスト、終わった。たぶんいろんな意味で。
「そんな死にそうな顔する?」
顔を上げると、隣の席の結城が笑っていた。
「うるさい。結城は頭いいからいいじゃん」
「別に普通だって」
そう言いながら、結城は私のテストをちらっと見る。
「うわ、これやば」
「見るな!」
私は急いでテストを隠した。結城は声を出して笑う。ほんとむかつく。
結城悠真は、クラスでもわりと人気ある男子だ。背も高いし、サッカー部だし、女子とも普通に話す。でもちょっと意地悪。
私はそんな結城が、少し苦手だった。
……たぶん。
「てかさ、今日委員会あるよね」
「あ」
忘れてた。
私は図書委員だった。めんどくさいから本当はやりたくなかったけど、じゃんけんで負けた。
「結城もだっけ?」
「うん」
最悪だ。
図書室に行くと、先生が言った。
「悪いんだけど、資料運ぶの手伝ってくれる?」
「はい」
結城と二人で段ボールを持って運ぶことになった。
「重っ……」
「ちゃんと持てって」
「持ってるし!」
廊下を歩いてると、結城が急に笑った。
「なんで笑うの?」
「いや、おまえ顔真っ赤」
「重いから!」
「あっそー」
絶対からかってる。
でもその時、結城が段ボールを少し自分の方に寄せた。
「え?」
「そっち重そうだから」
その言い方がすごく自然で、なんかずるかった。
図書室で作業を終えて帰ろうとした時、急に外で雨が降り始めた。
「うわ、最悪」
私は傘を持ってきてなかった。
窓の外を見ながら困っていると、後ろから声がした。
「入る?」
振り向くと、結城が傘を持っていた。
「え、でも」
「家近いじゃん。途中まで一緒でしょ」
たしかにそうだった。
結局、一つの傘で帰ることになった。
雨の音が近くて、なんか変に静かだった。
「……狭くない?」
「おまえが離れすぎなんだって」
「だって近いし」
「今さら?」
結城は少し笑った。
街灯に照らされた横顔を見た時、なんでかわからないけど、急にドキッとした。
その瞬間。
「うわっ」
水たまりで滑りそうになった私の腕を、結城がつかんだ。
「危な」
「……ありがと」
心臓がめちゃくちゃうるさい。
雨のせいなのか、別の理由なのか、自分でもよくわからなかった。
次の日。
教室に入ると、結城がいつもみたいに「おはよ」って言った。
なのに私は、まともに顔を見れなかった。
たぶんあの日から、少しだけ。
結城を見る気持ちが変わったんだと思う。
