この恋が終わる頃

 教室においてきてしまった忘れ物をとりに向かうとそこには、徳井がいた。
 彼を呼ぼうと口を開くと彼はすかさず距離を詰め私の口を塞いだ。
「何?」
 小声で言うと彼は、まぁまぁと言いながら教室から距離を置く。
「どうしたの?」
「何しにきたの?」
「忘れ物。それに浦間が来ないからいるかなって」
「いないよ。さっき確認した」
「でも、忘れ物が」
「いいって、一日くらい」
「何?さっきから変なんだけど」
「そんなことねぇよ」
 と、話していると彼が普段使用しているタオルが見当たらない。
 いつもは肩にかけているものがそこにない。
「あれ、いつも使ってるタオルは?」
「え、あぁ、洗ったばっかで乾いてねぇって母さんが」
「ふーん」
「な、ちょっとその辺で喋らね?忘れ物なら少しくらいいいだろ」
「うん、わかった」
 外の体育館裏のベンチに腰をかける。
 彼が私を呼び止め喋らね?とか言ってくる時はいつだって好きな人のことだ。
「もし、好きな人が泣いてたら、どうするべきなんだ?その人にはさ、好きな人がいるわけで今も好きなわけだから一人にしてやったほうがいい気がして」
「それで一人にしちゃったんだ。私のこと無理やり教室から遠ざけたのはそう言うこと?」
 と、いじってやる。
 私の気持ちに鈍感な隣の彼は、ずっと浦間のことを好きでいる。
 浦間が大崎と付き合った時は、私の隣でボロ泣きしていたようなやつ。
「ま、まぁ」
「一人にさせちゃって良いのかな」
「なんで?」
「だって、他にも教室に行く人はいるでしょ?」
「確かに」
「好きならずっとそばにいてあげれば良いのに」
「俺、行ったほうがいい?」
「それはそうだよ」
「行ってくる」
 彼は足早に行ってしまった。
 本当なら引き留めるべきなんだ。
 本当なら嘘でもついてここにいさせるべきなんだ。
 本当なら、行かないでって言うべきなんだ。
 なのに私は、彼が幸せになれるならそれを望んでしまう。
 私の幼馴染と付き合うならそれはそれでいいかと思ってしまう。
 彼は悪い人じゃない。
 浦間ともきっと合うはずだ。
 なんでこんなにも嫌な気持ちなんだろう。
 私は、最低だ。