記憶喰いの呪剣《ラストメモリア》を、俺は使いたくない

黒刃先生は電話をするため、その場を離れた。

「私だ、久遠に接触してきたものがいる」

「えっ。やっぱり」

「そうだ。多分だが久遠のラストメモリアが狙いだと思う」

「今年の合宿どうします?」

「このまま、実行する」

「わかりました」

「それと警備強化も頼めるか?」

「了解です。警備強化しときます」

「よろしく頼む」

「はい」

黒刃先生は電話を切った。

「……本当は、言いたくはないが」

久遠に言うべきか。悩んでいたがのちのちバレる事も当然だろうと思い本人に言う事にした。

「久遠ちょっといいか?話がある」

「わかりました」

「久遠、今朝あった奴はお前のラストメモリアを狙っている」

「どういう事ですか?」

「何が目的なのかはわからない」

「……俺はどうしたらいいですか?」

「お前は自分のやるべき事をやれ」

「わ、わかりました」

そして久遠と黒刃先生は訓練を始めた。

「キィィン!」

「久遠それじゃ、勝てないぞ」

「はい」

訓練は夜まで続いた。

「今日はここまで」

「ハァハァ。ありがとうございました」

「明日からは合宿だ。引き締めろ」

「はい」

(俺のラストメモリアを狙ってるのか。なんの為なんだ)

久遠は訓練を終え、学生寮まで歩いて帰った。
その道中、頭の中で何度もその言葉を繰り返していた。

「朔?」

「あ、綾人」

「どうした?こんな所で立って」

久遠は綾人にラストメモリアを狙っている敵がいると話した。

「マジか!今朝あった奴はお前のラストメモリアを狙ってるのか」

「声、大きいって」

「わりぃ」

「君たちここで大きな声出すのはやめなさい」

「すみません」

「すみません」

「俺の部屋で話そう」

「わかった」

そのまま二人は久遠の部屋へ向かった。

「綾人、何か飲み物いるか?」

「じゃあ、もらう」

「わかった」

久遠は綾人にお茶を出した。

「どうぞ」

「ありがとう」

「何でラストメモリアを狙ってるんだ?」

「本当にわからないんだよ」

「ラストメモリアを狙って何の意味もないはず」

「確かにそうなんだよ」

「それを奪ってこの世界を支配したいとか?」

「それは無理だと思う。ラストメモリアは代償として記憶を喰うんだから」

「確かに」

話をしていたら食堂の時間が過ぎていて、もうしまっていた。

「あー」

「どうしたんだ、綾人」

「朔、時間見てみろ」

「時間?」

久遠は時計を見た。時刻は夜の8時だった。もう、食堂はしまってしまった。

「綾人、コンビニでなにか買いに行くか?」

「そうだな」

久遠と綾人はコンビニで夜ご飯を買いに出かけた。

「朔、明日合宿だな」

「うん。なにも起こらなければいいけど」

「そうだな」

コンビニに着いて弁当を買った。そして、公園のベンチで一緒に食べた。

「美味しいな」

「うん。美味しい」

「たまあにこういう事もありかもな」

「そうだね」

「俺は朔と仲良く出来て嬉しい」

「何だよ。いきなり」

「なんか、言いたくなってさ」

「そうなんだ。俺も綾人と仲良く出来てよかったよ」

「おう」

弁当を食べてそれをゴミ箱に捨てて学生寮に戻った。

「綾人、また明日」

「おう。おやすみ」

「うん。おやすみ」

お互いの部屋に戻った。久遠はそのまま眠りについた。

久遠に手強い敵が近づいてきていることは、まだ知らない。

「何だ。お前か、どうした?」

「明日は合宿です。チャンスかも知れません」

「報告ご苦労。引き続き報告をよろしく頼む」

「はい」

「ラストメモリア……必ず手に入れてみせる」

「黒宮。後は任せたぞ」

「はい。私がラストメモリアを奪ってみせます」

「よろしく頼む」

朝を迎えた。一年生だけの合宿が始まった。これは一年生の恒例行事になっている。

「A組は揃っているな。これからバスに乗って行く。おそらく1時間はかかる」

A組はバスに乗った。そして違うクラスもバスに乗った。バスは4台だった。この学園はDクラスまではある。

みんなはバスの中で浮かれていた。この合宿は過酷な訓練とは思っていなかった。

バスはどんどん山へ向かっていた。もう街も見えなくなり、ひとけのない道に進んだ。学園用携帯も「圏外」になってしまった。

「朔君、どうしたの?怖い顔して」

「考え事してた。ごめん」

「大丈夫?」

「うん。ありがとう」

山奥の1番上まで着いた。クラス全員バスから降りた。
合宿の扉が開いた。中から誰かが出てきた。

「第零異能記録学園の皆さん。遠い所まできてくれてありがとうございます。ここのオーナーを務めてます。短い期間ですが二週間頑張ってください」

「午後から訓練が始まる。それまで休憩だ」

(なにも起こらないことを信じよう)

久遠はそう願っていた。

小夜が三人に「探索しない?」と話してきた。

「ねぇねぇ。ここ、探索しない?」

「いいね」

綾人は乗り気だった。2人も賛成をした。

「いいよ」

「うん」

そして合宿場所を探索した。ここはかなりの広さだった。多分1人で行動すると迷子になるぐらいだった。

色々、探索をしていると立ち入り禁止の場所があった。

「ここは立ち入り禁止なんだな」

「うん」

「なんか開けたくなるな」

「綾人やめとけ」

「えっ。少しぐらいいいと思うけど」

綾人はそこを開けようとしていた。だけど、誰かが止める声がした。

「そこで何している!」

4人は体がビクリとした。

「うわぁ!」

「きゃ!」

止めたのはオーナーだった。

「ここは立ち入り禁止だ。入ってはならん」

「すみません」

4人はその場から離れた。

「びっくりした」

「綾人のせいで怒られただろ」

「そうだよ」

「うん」

「わりぃ。気になって」

「もうすぐ始まるから行かないと」

「本当だな」

「行こう」

「うん」

4人は一旦自分達の部屋に戻った。この合宿は2人で一つの部屋を使う。ちょうど、久遠は綾人と一緒になった。

剣を腰に差して訓練所に向かった。

「みんな集まったな。これから、4人のチームを組んでくれ。男女でもかまわん」

言われた通り4人チームを作った。
久遠は綾人、小夜、雪乃でチームを作った。

「よし、4人のチームを組んだら、違うチームと戦ってくれ。呼ばれたチームは前に出ろ」

次々と呼ばれてチーム戦が始まった。次は久遠が呼ばれた。

「次、久遠チーム前に出ろ。お前らは私と勝負だ」

「えっ」

「何でだよ」

「いいから、かかってこい」

4人は初めての連携で、全然黒刃先生にはかなわなかった。

「まるで歯が立たない……」
息は乱れ、腕は震えていた。だが黒刃先生は一歩も動いていない。

黒刃先生は平然としていた。この強さはどこからきているのか、わからなかった。