記憶喰いの呪剣《ラストメモリア》を、俺は使いたくない

「試合?何の事ですか?」

「久遠、試合する事も忘れたのか?」

「はい」


「そうか。それなら……試合を放棄するか?」

「しないです」

「おっ!それは何でだ?記憶を奪われて戦っても返り討ちになるだけだぞ」

「……なんか、戦わないといけないような気がするんです」

久遠は布団を握りしめた。

「そうか。このまま戦う気だな」

「はい」

「わかった。私も何も言わない。動けるな。1人で寮に戻れるか?」

「戻れます。場所は覚えているので」

「わかった。それならいい」

保健室から出て寮に戻ることにしたが、帰る途中にベンチがあった。久遠はそのベンチに座る。

「俺はどうしたらいいんだ」

久遠は悩んでいた。知らないうちに夜になっていた。寮に戻る。
寮に戻ったけど食欲がなかった。

「コンコン」

誰かが部屋をノックした。
久遠は扉を開いた。
ドアの前に立っていたのは夜桜だった。

「ごめんねこんな時間に来ちゃって。お菓子作ったの。食べてくれる」

「あ、ありがとう」

「うん。明日試合だよね。頑張って応援するから」

「う、うん」

「どうしたの?」

「な、なんでもないよ。ありがとう。明日頑張るね。おやすみ」

「う、うん。おやすみ」

久遠はドアを閉めた。夜桜は何か違和感があった。

「何か雰囲気違うような。もう一回行くしかない」

夜桜はまた久遠の部屋の前に行ってノックをした。

「コンコン」

「ガチャ」

「どうしたの?少し様子がおかしいから」

「何でもないよ」

「もしかしてだけど記憶奪われてる?」

「う、うん。君の名前が思い出せないんだ」

「やっぱり。私の名前は夜桜小夜だよ」

「夜桜さん。心配してくれてありがとう。不安だったんだ」

「そうなんだ。久遠君は大丈夫だよ。君は明日の試合は不安?」

「うん。本当は放棄したい。でも、何かここで逃げたらいけないと思った」

久遠の本音は放棄したいって思っていた。
夜桜は久遠に一言言った。

「大丈夫だよ。久遠君は強い人だから。それに今は1人じゃないよ。私もいるんだから」

「ありがとう。もう大丈夫」

「よかった。もう寝るね。おやすみ」

「うん。おやすみ」

久遠は明日の試合に備えて寝た。
試合当日になった。会場は盛り上がっていた。
実況者はお馴染み火ノ宮と冬城だ。

「始まりました。今日の試合は鬼塚爆牙VS久遠朔です」

「そうですね。今日の注目は鬼塚です。なぜなら、この前の試合は相手が戦闘不能になったのにも関わらず殴り続けて病院送りにしました」

「はい。恐ろしいですね。ですが、久遠も負けてません。何でしたっけあの剣」

「ええと、ラストメモリアですね。あの禍々しい剣を使った本人の記憶を奪われるそうです」

「なるほど。危険な剣って事ですね」

「はい。もうそろそろ始まります」

控え室には久遠と黒刃先生がいた。

「久遠記憶は戻っているか?」

「いいえ」

「そうか。試合は出来そうなのか?」

「はい。大丈夫です。でも本当は怖いです。何で俺がこの……剣を受け継ぎないといけないんだと」

久遠はラストメモリアを見た。

「そうか。それならいい。行ってこい。そして勝ってこい」

「わかりました」

久遠は控え室から出て会場に向かった。

「両者準備が出来たそうです」

「それじゃ、出てきてもらいましょう」

久遠は試合の真ん中に立った。そして、奥から鬼塚も出てきた。

「久遠、逃げずに来たんだ」

「そうだ。だけど、お前には勝つつもりだけど」

「何だと。お前も二度と戦えない身体にしてやる」

「やってみろ」

2人は戦う前にバチバチだった。

「両者試合開始」

審判が試合の開始を言った。

いきなり鬼塚は接近して殴る体制にはいった。
久遠は腰から剣を取り出した。
鬼塚は久遠の顔面にむけて殴ってきた。
久遠はとっさにかわした。だけどホッペにかすっただけだった。

「へぇー。かわすとは思わなかったぜ」

(近寄ると危ないな。少しかわしつつ様子をみるか)

(ダメだ……速すぎる)
(このままじゃ押し切られる……!)

「どうした?攻撃してこないのか?」

久遠は本当はかわすだけで精一杯だった。
鬼塚は技を繰り出した。

「爆砕拳(ばくさいけん)」

久遠はガードを構えた。鬼塚は拳に、爆発的なエネルギーが集まる。次の瞬間──腹部に直撃した。

「カハァ」

「まだここで倒れては困るだけどな。早く立てよ」

久遠はヨロヨロしながら立った。

「そうこなくちゃ。ほら、行くぞ」

連続パンチを繰り出す。ガードするが完全に防げてはなかった。
久遠も剣で戦うがことごとくかわされる。

「あまい」

今度は顔面にくらった。

「バキッ!」

「これで終わりにする」

「終拳・鬼神潰し(しゅうけん・きしんつぶし)」

最後の一撃を久遠に殴りに行く。

「ここまでなのか?」

久遠はもう体がボロボロで立てない状態だった。試合観戦から夜桜の声が聞こえた。

「久遠君立って。頑張って」

「夜……桜さん」

久遠は最後の踏ん張りで立った。
ガードするのも間に合わない状態だった。
鬼塚がもう目の前にいた。

「ドーン!」

「勝った」

砂ぼこりが晴れる。

「いないだと……?」


「いないだと」

「──後ろだ」

低い声。
振り向いた先にいたのは──

「何だと」

振り向いた鬼塚の視界に映ったのは──

黒い瘴気を纏った剣を構える久遠の姿だった。

「ここから俺も本気で行くぞ」

久遠は本気になった。

「な、な、な、何と久遠あのラストメモリアを出した」

「どんな展開になるんでしょ」

「それを使って何になるんだよ。俺に勝つつもりか?」

「そうだけど」

「お前はその剣は使いたくないんだろ?そのまま終わってたらいいのによ」

「ラストメモリアは使いたくはない。代償で俺の記憶を喰われるからな。長話はいいから戦うぞ」

「そうだな」

そして、また2人は戦いが始まった。

久遠は初めてみんなの前で技を出す。

「漆黒連斬(しっこくれんだん)」

剣から放たれた黒い斬撃が鬼塚に飛んできた。
拳で弾き返した。
斬撃は壁に当たって壁が崩れた。

「へぇー。いい攻撃してるな。だけどな、俺はこんなんで倒せないぜ」

試合はまだまだ続いた。

「今度は俺から攻めさせてもらう」

久遠は剣で立ち向かう。鬼塚は構えた。

「黒閃二連(こくせんにれん)」

久遠は二連撃を出した。鬼塚は拳で一撃は、はじいて二連目は避けた。

「久遠なかなかやるな。楽しいぜ」

鬼塚は久遠に殴ろうとしたが体が動かなくなっていた

(……なぜ体が動かない)

「やっと動かなくなったか」

「お前何した?」

「俺の技を食らったからだよ」

「何だと」

「その技はな……すぐには効かない」

「時間とともに侵食して、体を鈍らせる」

「な、何だと」

「これで終わりだ」

久遠はラストメモリアで鬼塚を切った。鬼塚はそのまま倒れた。

「ドサッ」