記憶喰いの呪剣《ラストメモリア》を、俺は使いたくない

久遠と小夜は戻り、久遠が見つかったことをみんなに報告した。

「朔、どこに行ってたんだよ」

「ごめん。君のこともわからないんだ」

「朔君公園にいたの」

「そうなのね」

「朔、今日はゆっくり休むんだ」

「……わかった」

久遠は綾人と部屋に戻った。

「朔君大丈夫かな?」

「大丈夫だと思うよ。記憶が戻るまで待とう」

「うん」

小夜と雪乃も戻った。

久遠はそのまま、眠りについた。
綾人は黒刃先生に久遠が見つかったことを話した。

「久遠見つかったか」

「はい。黒刃先生、久遠の戦いのビデオ見せてもらっていいですか?」

「いいけど、どしたんだ?」

「少し気になることがあって」

「なるほど。少し待ってろ」

「はい」

黒刃先生はテレビを持ってきて、久遠の戦いの映像を見た。

「久遠は何でラストメモリアをしまって、スプリットセイバーに持ち替えたんだろう?」

「さぁな」

「しまった瞬間、少し止まってませんか?」

「本当だな。ラストメモリアの代償か」

「まだわかりません」

「久遠は記憶が戻るまでは、部屋で待機だな」

「わかりました」

綾人はそのまま、自分の部屋に戻った。

久遠はベッドで眠り、夢を見ていた。

「ここはどこだ」

久遠は辺りを見回したが、真っ暗だった。

「やっとお前と話せたな久遠朔」

「お前は誰だ」

「ワシを知っているはずだ。ワシの名はラストメモリアだ」

久遠の前に現れたのは、剣の姿をしたラストメモリアだった。

「久遠朔、お前が使った第1段階能力解放は、10分しかもたない。能力解放中は、技の威力も上がるからな。10分を超えて使えば、ワシはお前の記憶を喰う。今回は初めて能力を解放したから、その代償が現れたんだろうな」

「何故、俺の記憶を喰うんだ」

「これがワシの能力だからな。スプリットセイバーは、ワシの力を抑えるために作られた剣だ」

「ラストメモリアとスプリットセイバーを、いつか一つにしてやるからな」

「ほぉ。どうやって一つにするつもりだ? もし本当に一つになれば、ワシを抑えられなくなるかもしれないぜ」

「どういうことだ?」

「スプリットセイバーは、ワシの力を抑えるために初代久遠が作った剣だからな」

「お前が、昔みんなの記憶を喰ってたからだぞ」

「ふん。ワシはそんなこと知らない。もう起きる時間だぞ。これだけ言っておく。お前は今回、第1段階能力解放を使えるようになった。能力解放は第3段階まである。第2段階能力解放を使えば、お前の1週間分の記憶を奪う。第3段階能力解放では、1か月分の記憶を奪うからな。第1段階能力解放は、10分までしか使えない。覚えておけ。じゃあな」

「おい、待て!」

久遠は目を覚ました。しかし、失った記憶はまだ戻っていなかった。

「……今のは何だったんだ。思い出せない」

「朔、起きたか。朝、ご飯食べに行くぞ」

「う、うん」

久遠と綾人は食堂に行った。

「2人ともおはよう。よく寝れた?」

「おはよう。寝れたよ。小夜と雪乃は寝れた?」

「私は寝れなかった」

「私は疲れてて寝てたわ」

食堂で色々な話をしたあと、訓練が始まった。
久遠は待機を命じられ、三人の戦いを見守っていた。

そして、トーナメントが始まった。

「今日からトーナメント戦か」

「うん」

「みんな頑張ろう」

「……」

久遠はまだ黙ったままだった。

「やっぱり朔、記憶戻らなかったな」

「うん」

「大丈夫かな」

「わからない。このまま試合に出られるのかな」

久遠の対戦相手は上級生だった。

試合前、久遠は待合室で綾人と話していた。

「朔、無理なら戦わなくていいんだぞ。記憶が戻っていないなら、なおさらだ」

「大丈夫だよ、綾人。心配してくれてありがとう」

「お前、本当に記憶が戻ったのか? 無理しているんじゃないだろうな」

「うん。今、記憶が戻ったよ。まだ少し不安はあるけど、綾人が心配してくれているのはわかってる」

「そうか……。でも、無理だけはするなよ。お前に何かあったら、俺は……」

「わかってる。綾人が信じてくれているから、俺も戦える。必ず戻ってくるよ」

「ああ……。信じてる。けど、本当に危なくなったら、すぐに降参するんだぞ」

「ああ。行ってくる」

「朔、気をつけろよ!」

「ありがとう、綾人。行ってくる」

「続きまして、次の試合は久遠朔VS紅蓮寺隼人(ぐれんじはやと)」

「ふん。お前は俺に勝てない」

「勝たせてもらいますよ、先輩」

「生意気な」

「では、開始」

「カーン」

試合開始のゴングが鳴り響いた。

「では、行くぞ」

久遠は剣を構えた。紅蓮寺は久遠に切りつけた。

久遠は剣で受け止めたが、その一撃は重かった。

(クッ。なんだ、この重さは)

「お前が使っている強い剣、ラストメモリアだったか? その剣は使わせない」

紅蓮寺は、久遠のラストメモリアを抜かせないため、攻めていた。

「スプリットセイバーでどうにかするしかない。どうすれば突破できる?」

久遠は突破口を探していた。

「朔、頑張れ」

「朔君大丈夫かな。記憶戻ってないんでしょ?」

「大丈夫。アイツなら」

「本当なの?」

小夜は心配していた。雪乃も心配そうに見守った。

「どうした、防御だけしてても勝てないぞ」

「どうすればいい? 攻撃の隙ができるはずだ。考えろ!」

「これで終わりにしよう。紅蓮衝(ぐれんしょう)!」

紅蓮寺の剣が炎のようなエネルギーをまとい、久遠に強烈な一撃を放った。

「グハッ!」

久遠は口から血を吐きながらも、立ち上がった。

「ほぅ。まだ立ち上がるか。これを食らって立ち上がった奴はいなかった」

「今の一瞬気を失いかけましたよ」

「ハハハ。この連撃に耐えられるかな? 爆炎連撃(ばくえんれんげき)!」

間髪入れずに連続攻撃を仕掛ける。

久遠は連続攻撃をかわしたが、腕や顔に攻撃がかすった。

(このままでは殺られる)

久遠も技を出す。

「裂空!」

久遠が剣を振り抜く。

「無駄だ!」

紅蓮寺は剣を構え、久遠の一撃を受け止めた。

金属音が試合場に響き渡った。

「どうした。これで終わりか?」

「まだだ。連斬」

「どんな技を使っても無駄だ!」

久遠はラストメモリアを抜こうとしても抜けなかった。

「これで、終わりにしよう。紅蓮崩壊(ぐれんほうかい)」

紅蓮寺は全身の力を一点に集中させ、大技を放つ構えを取った。

「これで終わりだ」

久遠は紅蓮寺の大技が放たれる直前、その隙を狙ってラストメモリアの柄に手を伸ばした。

「もう間に合わねぇよ」

辺りに煙が立ち込め、紅蓮寺は勝利を確信していた。

「俺の勝ちだな」

辺りの煙が晴れていく。

煙の向こうに紅蓮寺が見たものは、ラストメモリアを抜き、大技を受け止めている久遠の姿だった。

「何!」

「この技、強いですね。スプリットセイバーだったら負けていたかもしれません」

「何でラストメモリアを抜けている?」

「紅蓮寺先輩と戦って抜く自信はありませんでした」

「どうやった」

「こいつの能力を使ったのさ」

久遠は左腕の袖をまくり上げ、呪剣制御腕輪《カース・レギュレーター・ゼロ》を見せた。

「なんだそれは」

「ラストメモリアの力を抑えるための道具さ。第1段階能力解放を使えば、スピードも技の威力も上がる」

「そんなのしても変わるわけもない」

「俺は先輩に勝つつもりで戦います」

久遠はそう言った。

「第1段階能力解放」

「なんだそのオーラは」

「これはラストメモリアの能力解放です。長話はやめにしませんか? この技、もって10分しか使えないので」