神様になった元カレが、私を溺愛してるのは生贄だからってだけですか!?

〇離れ廊下

離れの紹介をして回る狐白。
後ろを慣れない着物でよちよち歩く美桜。

美桜(歩きにくい......)

狐白「こちらが......」

まだ紹介中だが、離れが広すぎる。(※平面図)
美桜のミニキャラが泣く。

美桜M「広すぎない!?泣」

太もも辺りをさする。
美桜の耳には届いてないが、ペラペラ話してる狐白。
困った顔をする美桜。
話が一段落したタイミングで、きらんと目を輝かせ、美桜が話しかける。

美桜「お話途中にすみません......ずっと気になっていたのですが、神様の事はなんとお呼びしたらいいですか?」

首を傾げ考える素振りをした後、ソワソワと提案してくる狐白。

狐白「私のことは、狐白と呼んでください」

「・・・」と後ろに背負う美桜のミニキャラ。
黒目が点になる。
頬に汗をかきながら、身振り手振りを加え何とか嫌味なく伝える美桜。

美桜「え、いや、神様を呼び捨てになんてできません...」

狐白「...?」

心底純粋な表情で、首を傾げてしまう狐白。
苦笑いの美桜。(※脳内ミニキャラ美桜が叫ぶ)

美桜(呼べるわけないでしょ!)

トホホと言いたげに脱力しかけの美桜。

美桜「では、狐白様と呼ばせて頂きます」

狐白「♪♪」

満足そうに背を向けて歩き始める狐白。
しっぽが揺れているのを見た美桜が、手で口を抑え愛おしそうに笑う。

美桜(嬉しそう......)

〇狐白の部屋

さらに離れの奥に入り、キョロキョロ辺りを見る美桜。
扉を横にスライドしながら、ふいっと美桜に目を配る狐白。

狐白「残りの部屋はまた明日案内します」

ミニキャラ小春が驚く。

美桜(まだあったの!?)

その感情を出さないように笑顔を作り。

美桜「はい。よろしくお願いします」

部屋にそそくさ入っていく狐白。
戸惑いつつ後をついて入る美桜。
畳まれた敷布団に、高級そうなブラッシング。
座るとみぞおち辺りにくる高さの机。座布団も置かれてる。
本棚のような棚には、びっしりと本や巻物が置かれている。
慣れた素振りで座布団に座る狐白。
振り返り。

狐白「ここは私の自室になります」

少し周りを見て。

美桜「凄い沢山の本ですね...」

照れ臭そうに頬をかく狐白。
机の上に置かれた紙を撫でながら。

狐白「読書と書き物が趣味でして」

じーっと狐白を見つめたあと、目を伏せて微笑む美桜。

美桜「素敵な趣味ですね」

その姿に見惚れた狐白が、獲物を狩るような目になる。
ガバッと立ち上がった狐白が、勢いのまま美桜を抱きしめる。
バランスを崩す美桜だったが、しっかり抱きしめられてたち直す。
口をパクパクさせる美桜。(※頬に汗)
ギューッと力を込める狐白。

美桜「ちょ......!狐白さ......」

瞳孔が開く美桜。

美桜(食べられる...!)

少し抵抗しようとするけれど、狐白の力が強く身動きが取れない。

美桜M「そうだ。私は生贄としてここに来たんだ」

恐怖で動けなくなる。
抵抗が止まったのことに気がつく狐白が、耳元で囁く。

狐白「さっき言ったでしょう。取って食ったりはしませんよ」

吐息が耳にかかり、ひゃ!と言いながら膝ががくんと折れる美桜。
それに動じることなく、ニヤリと口角を上げる狐白。
共に床にゆっくりと座り、美桜の背後に回り抱きしめる。
強ばる肩を撫でながら。

狐白「ほら、肩ガチガチですよ。力抜いて」

美桜(無理!無理!!)

目をぎゅっと閉じてる美桜。
狐白のしっぽが後ろから美桜の頬を撫でる。
反射で目を開いた美桜が狐白のしっぽを触る。
狐白の腕がピクっと動いたのを見て、後ろを向きたがる美桜。
狐白が美桜の首元に顔を埋め。

美桜「すみません.....!痛かったですか!?」

狐白のしっぽを優しく撫で続ける美桜。
しっぽが大きく波打ち後ろに帰っていく。

狐白「......その様な場所を触る者に初めて出会ったものですから...」

じとっと赤らめた顔で美桜を見上げる狐白。
その顔に美桜まで恥ずかしくなり目を逸らす。

美桜「す、すみません...!!」

狐白「いえ、嫌悪感はありませんでした」

そのままの体勢で数分が経過する。
ドッドッドッと心音が美桜の中で響く。

美桜M「この体勢はいつまで続けるの...!」

美桜M「もういいんじゃない!?」

もじっと逃げようとすると、ぎゅっと力を込められる。
大人しく背を預けてみる美桜。
(!)と驚いた狐白だったが、嬉しそうに表情を緩め抱き寄せる。

狐白「これから美桜さんには、生贄としてこうして私にお世話されているだけでいいんです」

『簡単でしょう?』と顔を覗き込まれる美桜。
フリーズしたあと、慌てて狐白の腕力をこじ開け逃げる美桜。
名残惜しそうに腕を残す狐白。

美桜「待ってください...!!これから毎日ですか!?」

狐白「...?えぇ、身の回りの事は全てこの私が」

開いた口が塞がらない美桜。
狐白に背を向けて、頭を抱える。

美桜(生贄ってこんな感じなの!?)

モザイクで酷いシーンを再び浮かべる美桜。

美桜(それとも私を騙してる!?)

おずおずと身を竦めながら、狐白の方をちらりと見ると。
美桜に触れられたしっぽを、ふわふわ動かしながら観察している狐白。
再び前を向く美桜。

美桜(いや!?あの人が、人?...か、神様が悪いこと考えてるなんて思えない!!!)

頭を悩ませる美桜。
その後ろ姿を見て、ふん、と困ったような愛おしそうな息を吐いたあと、サッと立ち上がる狐白。
部屋を出ていこうと背を向け。

狐白「あ、そうだ。春限定の金平糖が取ってあるんでした」

物凄い勢いで振り返り、キラッと目が輝いて、ヨダレを垂らす美桜。

〇離れの縁側

金平糖の包み紙を膝の上に広げる美桜。
淡いピンクの金平糖を空に照らし。

美桜「綺麗......」

音符が飛び交う美桜を見つめる狐白。
穏やかに風も吹く。
少し目線を下げて微笑む狐白。

狐白(相変わらず綺麗な食べ物が好きなんだな)