鈍感なあの子を落とすには

「誰に何と言われようと、恭弥の人生じゃん」

 その言葉に、

「やりたいことすればいいんじゃない?」

 その声に、

「私は恭弥の味方だからね」

 その笑顔に、
 俺がどれだけ救われたか、あいつは分かってない。
 ただでさえ仲は良かったのに、そんな風に励まされてしまっては、もはや好きになるのは当然だった。

 そんな出来事から4か月。高校2年生になった俺に待ち受けていたのが、クラス替え。3年生になる時はクラス替えが無いので、ここで同じクラスになれるかどうかが大事になってくる。胸一杯の不安と、少しの望みを抱えて、クラスの一覧表を見た。


直江玲衣
西崎恭弥


 同じ、クラス。同じクラス……!上がりそうな口角を抑えるのに必死だった。その時。

「お、恭弥また一緒じゃん!」

 肩をポンと叩かれ振り向くと、そこにはあいつ———直江玲衣がいた。

「よろしくな!」
「よろしく」
「あっ!咲希だ!咲希ーーー!」

 あっという間にいなくなってしまった。こちらの気も知らないで。

 仲は良いのに進展しない、その大きな理由が、玲衣の鈍感さにある。周りにどれだけ揶揄われても、照れたり恥ずかしがるどころか、ただの悪ノリと同じように扱う。膠着状態にあるこの関係を、早く進展させたかった。

 靴を履き替えていると、前方に親友の姿が見えた。

「絢斗おはよう」
「おぉ恭弥じゃん。おはよう」

 絢斗は唯一、玲衣への想いを自分から相談した相手だ。
 絢斗と喋りながら教室へ行くと、さっき駆けていった玲衣と、咲希と呼ばれていた女子がこちらに気づいた。玲衣が口を開く。

「恭弥ー!絢斗くん!2人とも生活班一緒だよ!よろしく!」

 イヒヒ、と笑うその姿が、可愛くて仕方なかった。

 これは、俺が玲衣の本心を知るまでの物語だ。