その言葉は、ほとんど無意識だった。
小春は朔夜の元へ駆け寄り、膝をつくと、風呂敷を急いで開いた。
中から取り出したのは桜餅。
やわらかな餅に包まれた淡い色合い。
その上には、塩漬けにされた桜の花が控えめに乗っている。
「朔夜様、少しだけ…… お召し上がりください」
返事はない。
ただ、朔夜の視線が小春を捉えている。感情は見えない。
そこに意思があるのかどうかさえ、判然としなかった。
小春は桜餅を一口大にちぎり、そっとその唇へ近づけた。
触れた唇は、氷のように冷たかった。
(これが……死神?)
一瞬、手が止まる。
だが小春は息を詰めたまま、もう一度力を込め、その冷たい口元へと差し入れた。
朔夜の口に菓子が入った──その時。
