死神の旦那様は花嫁菓子しか食べられない 〜捨てられた霊草菓子職人は、主神様の唯一の救いになりました〜



 
 朔夜を掴む小春の手は、恥ずかしいほどに震えていた。
 その震えが朔夜の掌へじかに伝わっている。
 小春は逃げない。怯えながらもまっすぐ朔夜を見つめている。

 その手の熱に触れているだけで、朔夜の理性が焼けるようだった。

(小春が欲しい)

 朔夜の胸の奥に押し込めていた感情が、堰を切ったように溢れ出した。

 抱きしめたい。
 触れたい。
 安心させたい。
 泣かせたくない。
 誰にも渡したくない。

 そのすべてを、朔夜は小春の隣でずっと押し殺してきた。
 だが小春の言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸が切れそうになる。

 そっと小春が目を伏せ、涙が一筋、頬を伝った。

 それを見た瞬間、朔夜の中で何かが決壊した。
 理性がやめろと叫ぶ。
 だが、もう触れた指先を離せなかった。
 握られた手を強く掴み返す。

「朔夜様……?」

 小春のその不安げな声が胸を締め付ける。
 朔夜は堪えきれず、小春の肩を抱き寄せた。
「……っ」
 小春が小さく息を飲む。
 柔らかな身体が胸元へ触れる。
 ずっと欲しかった温もりだった。

 小春は抵抗も逃げもしない。
 ただ、震える瞳で朔夜を見上げている。
 その姿が愛おしくてたまらなかった。

 朔夜は小春の頬へ手を伸ばす。
 涙の跡を親指で拭った。
「どうして泣く?」
 掠れた声だった。
 小春は答えない。
 ただ、泣きそうな顔で微笑んだ。

 その表情が最後の理性を壊した。

 気づけば──朔夜は小春を抱え込むように畳へ押し倒していた。