死神の旦那様は花嫁菓子しか食べられない 〜捨てられた霊草菓子職人は、主神様の唯一の救いになりました〜




「やはり、酸の正体までは教えてもらえないのね」

 ラムネ作りに苦戦している小春は、買い出しのついでに薬種屋に寄っていた。今日もまた、店主から酸の材料を聞き出すことはできなかった。

 大きいため息をひとつ吐き空を見上げる。どこまでも透き通るような青空に思わず足を止めた。

(温かくて広くて……まるで朔夜様の腕の中みたい……)

 抱き抱えられた時の感触が蘇る。いつまでもそこにいたいと願ってしまうほど、安心できる場所だった。

 いつの間にか目を閉じていた。はっとして目を開けると、道ゆく婦人に不思議そうな顔で見られていた。小春は慌てて道の端に寄り、こそこそと歩き出した。

(ぼうっとしてちゃだめじゃない)

 赤くなった頬を押さえながら帰路を急ぐ。
 その時だった。

 質屋の店先を通りかかった小春の目に、信じられないものが飛び込んできた。

 店頭に並べられていたのは朔夜からもらった若草色の着物──紗良に奪われた、あの着物だった。

(紗良が売った──?)