(私は……必要ない?) 胸の奥が、すうっと冷えていく。 九条はそんな小春を見つめながら、ふっと薄く笑った。 「実家にも厄介払いされたんだっけ。……なら、僕が身請けしようか? 君、野花みたいな可憐さがあるし、嫌いじゃないよ」 神経質さを隠すような柔和な微笑み。 その顔が恐ろしく見えて、小春は思わず後ずさった。 その時だった。 廊下の奥から、床を揺らすような重い足音が響いた。 空気が一変し、九条と小春が同時に視線を向けた。 そこに立っていたのは、怒りの雷雲を纏ったかのような朔夜だった。