低く落とされたその言葉は、命令だった。
だが、その奥にあるのは縋るような弱さだった。
小春は目を見開く。
そこにあったのは先ほどの冷たさではない。
わずかに滲む焦りと、ひどく不器用な懇願だった。
「……はい」
理由はわからない。
それでも、気づけばそう答えていた。
ここで手を離してはいけない──そう強く思ったのだ。
小春はそっと掴まれた手にもう一方の手を重ねた。逃げるのではなく、受け止めるように。
その瞬間、朔夜の指からわずかに力が抜けた。
それでも手は離れなかった。
(初めて人を、救えたのかもしれない)
小春の胸の奥で、何かが静かに動き始めていた。
