2026-05-19
『思い出しては忘れる』
出会いって不思議で、今の自分に必要な人ばかりと出会う。それはきっと、「こう生きよう」と自分が決めた道の上での出会いであって、道を逸れてしまえばまた、そちらで必要な人に出会う。「出会いの数だけ別れがある」という言葉があるけれど、必要があるから出会いがあって、必要がないから別れに至るだけだと思う。思えば、学生時代に仲が良かった人とも縁が切れた。勿論、まだ関わっている人もいるけれど、大半の同級生とは違う道を歩みだしている。お互いがお互いを必要としていないから。
或る日、「格好良い車だね」とお婆さんに褒められた。無断駐車をされていて、僕は管理会社に電話をして対応を待っている最中。「ありがとうございます。でもね、無断駐車されてるんですよ」と、僕は愚痴をお婆さんにこぼした。「あら、大変ね。この車は...」と、お婆さんが話し始めたところで電話が来て、僕が対応をしている間にお婆さんはどこかへ行ってしまった。もう少し話してみたかった。でも、それ以上話したところで意味はなかった。それ以来、そのお婆さんとは一度も会えていない。
一度出会ってしまった以上、親密度が増していくことがあるけれど、別れに至れば出会う前よりも離れた気になる。道行く人に道を尋ねることは容易なのに、別れた恋人に連絡をすることは憚られる。「出会えてよかった」と言われたことも、「出会わなければよかった」と言われたこともある。どちらかと言えば、後者のほうが嬉しい。出会わなければ、容易に話しかけられるから。ただ、出会ってしまった。思い出もできてしまった。忘れられない記憶を育んでしまった。もう、必要がなくなったのに。
それでもふと、思い出してしまう人がいる。必要がなくて会わなくなったのに、それほどまでに親しいと言えないのに、思い出しては忘れてを繰り返す。連絡をしようにも何と言えばいいか分からないし、そのまま会わない選択をし続けている人。きっと会うべきなのだけれど、このまま会わずに終わる気がする。
「1番の後悔はなんですか」と、或る男性に訊ねたことがある。「会いたい人に会わなかったこと」と返ってきた。「その人が当時、何をしていたのか気になって仕方がないんだ」と続ける。「会えばいいんじゃないですか」と僕は言った。「もう会えないんだよ、どう足掻いても」と、男性は視線を落とす。それ以上、僕は何を言えばいいか分からなかった。
会いたい人は突然会えなくなるし、会えない人のことはいずれ忘れる。忘れるというよりは、記憶が段々と薄くなっていく。こうして文字を通して、あなたと出会えてよかった。けど、やがて僕のことを忘れる。出会わなければよかったかな。

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『思い出しては忘れる』
出会いって不思議で、今の自分に必要な人ばかりと出会う。それはきっと、「こう生きよう」と自分が決めた道の上での出会いであって、道を逸れてしまえばまた、そちらで必要な人に出会う。「出会いの数だけ別れがある」という言葉があるけれど、必要があるから出会いがあって、必要がないから別れに至るだけだと思う。思えば、学生時代に仲が良かった人とも縁が切れた。勿論、まだ関わっている人もいるけれど、大半の同級生とは違う道を歩みだしている。お互いがお互いを必要としていないから。
或る日、「格好良い車だね」とお婆さんに褒められた。無断駐車をされていて、僕は管理会社に電話をして対応を待っている最中。「ありがとうございます。でもね、無断駐車されてるんですよ」と、僕は愚痴をお婆さんにこぼした。「あら、大変ね。この車は...」と、お婆さんが話し始めたところで電話が来て、僕が対応をしている間にお婆さんはどこかへ行ってしまった。もう少し話してみたかった。でも、それ以上話したところで意味はなかった。それ以来、そのお婆さんとは一度も会えていない。
一度出会ってしまった以上、親密度が増していくことがあるけれど、別れに至れば出会う前よりも離れた気になる。道行く人に道を尋ねることは容易なのに、別れた恋人に連絡をすることは憚られる。「出会えてよかった」と言われたことも、「出会わなければよかった」と言われたこともある。どちらかと言えば、後者のほうが嬉しい。出会わなければ、容易に話しかけられるから。ただ、出会ってしまった。思い出もできてしまった。忘れられない記憶を育んでしまった。もう、必要がなくなったのに。
それでもふと、思い出してしまう人がいる。必要がなくて会わなくなったのに、それほどまでに親しいと言えないのに、思い出しては忘れてを繰り返す。連絡をしようにも何と言えばいいか分からないし、そのまま会わない選択をし続けている人。きっと会うべきなのだけれど、このまま会わずに終わる気がする。
「1番の後悔はなんですか」と、或る男性に訊ねたことがある。「会いたい人に会わなかったこと」と返ってきた。「その人が当時、何をしていたのか気になって仕方がないんだ」と続ける。「会えばいいんじゃないですか」と僕は言った。「もう会えないんだよ、どう足掻いても」と、男性は視線を落とす。それ以上、僕は何を言えばいいか分からなかった。
会いたい人は突然会えなくなるし、会えない人のことはいずれ忘れる。忘れるというよりは、記憶が段々と薄くなっていく。こうして文字を通して、あなたと出会えてよかった。けど、やがて僕のことを忘れる。出会わなければよかったかな。

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