氷の花嫁は愛を知らない

 すると白夜は少しだけバツの悪そうな表情をする。


「……申し訳ありません、主様。ですが、我の勘はよく当たるのです」


 ゆきはそんな二人を見つめながら、そっと湯呑みへ茶を注ぎ足す。


「伊織様は主様を気にかけてくださっていますよ?」

「だからこそ気に入らぬと言っているのだ」

「もう、素直ではありませんね」


 ゆきが困ったように眉を下げ、微笑む。

 冬乃は湯呑みを両手で包み込みながら、静かに雪を見つめていた。


***


 日が落ち、少し経つと遠くの本邸の方向から人々の声が聞こえてくる。

 どうやら客人が到着したらしい。

 普段は静かな屋敷が、今夜だけは少し騒がしかった。


「主さま、お客様なの?」

「そうみたい」

「九条家か。今夜は騒がしくなりそうだな。特に女どもがキャーキャーと」

「顔が整ってるって聞いたの!」


 白夜は顔をしかめ、しずくはニコニコと楽しそうに語る。

 冬乃は日が沈んだ空を見上げると静かに立ち上がる。


「そろそろ行こう」

「お務めですね」


 ゆきがそう言うと、冬乃は頷いた。

 離れの奥の、普段は閉ざされている部屋へ向かう。

 障子を開けた瞬間、ひやりとした空気が流れた。