氷の花嫁は愛を知らない

 彼女の家が霊力が高く、何より神の巫女だったため期待され家に迎えられた。

 だが、現実はそう甘くない。当時の冬乃は霊力が低くにこりと笑いもしない、終始不気味な子供だった。それを気味悪がった両親は離れへ閉じ込め一切顔を出さなかった。

 今はむしろ霊力が多くなってきており、この屋敷のなかで一番強いのだがそれは彼女自身とそばに仕える三匹の式神だけだった。

 白夜が持ってきてくれたお茶を一口飲み、ほう、と息をつく。

 すると塀の向こう側から、声が落ちた。


「……冬乃さん」


 聞き慣れた声に、白夜がわずかに眉をひそめた。


「また来たのか」

「そんな嫌そうに言わないでくださいよ」


 塀の向こう側から返ってきた声は、どこか苦笑混じりだった。

 冬乃は静かに顔を上げる。


伊織(いおり)

「こんにちは。今日は冷えますね」

「そうでもないよ」

「冬乃さん基準は当てにならないんですよ」


 くすり、と小さく笑う声が聞こえた。