氷の花嫁は愛を知らない

 短く答える冬乃の手へ、式神である小さな蝶がひらりと止まった。


「でもでも、主さまのおてて冷たいの!」


 淡い光に包まれ、蝶から幼い少女の姿になったしずくが冬乃の手をぎゅっと掴む。

 その様子を少し離れた場所から見ていた雪豹の白夜(びゃくや)は、呆れたように鼻を鳴らした。


「お前たちが甘やかしすぎなのだろう。我らの主様は、その程度で倒れるような方ではない」


 そう言いながらも、白夜は冬乃へ温かい茶を差し出してくる。

 人の姿をした雪豹の式神は、背の高い青年の姿をしていた。

 冬乃はそれを静かに受け取る。

 冬乃たちが住む離れでの時間は、穏やかで静かでそして、どこか空っぽだ。

 本邸から人が来ることは少なく、食事を運ぶ使用人たちも必要以上に長居はしなかった。

 けれど使用人たちは冬乃を露骨に嫌うわけではなく、むしろ人間関係は良好だ。

 問題は冬乃を引き取った現在の両親だった。ある一件で冬乃は両親を亡くし、今は天宮家に住んでいる。