氷の花嫁は愛を知らない



 天宮の離れは、今日も静かだった。

 しんしんと雪が降り積もる庭を眺めながら、冬乃は縁側に座っている。

 その膝の上では、式神である白猫が気持ちよさそうに目を細めていた。


(あるじ)様、お寒くはありませんか?」


 ふわり、と白い光が舞う。

 次の瞬間、猫だったはずの姿は、光に照らされると銀色に輝く長い白髪(はくはつ)を揺らす女性へと変わっていた。

 ゆきは冬乃の肩へ羽織をかけながら、どこか困ったように微笑む。


「もう少し暖を取られた方がよろしいかと」

「寒くないよ」


 短く答える冬乃の声は淡々としている。

 それも当然だった。

 冬乃は冬の神に仕える巫女であり、その身には常に冷たい霊気が宿っている。
 雪の降る寒さ程度で震えることはない。

 その代わり、夏の暑さには酷く弱かった。

 短く答える冬乃の手へ、式神である小さな蝶がひらりと止まった。


「でもでも、主さまのおてて冷たいの!」


 淡い光に包まれ、蝶から幼い少女の姿になったしずくが冬乃の手をぎゅっと掴む。

 その様子を少し離れた場所から見ていた雪豹の白夜(びゃくや)は、呆れたように鼻を鳴らした。