氷の花嫁は愛を知らない

***


「っ……!」


 妖魔に首を絞められた冬乃の瞳が大きく揺れた。

 呼吸が乱れ、体が震える。

 次の瞬間ぶわっ、と冬乃の身体から莫大な冷気が溢れ出した。

 ぱきぱきぱきっ、と床が凍り、次に壁や障子が、空気そのものが、凍りついていく。

 妖魔が目を見開いた。

 冬乃の首を掴んでいた腕が、一瞬で氷に覆われる。

 だが、妖魔は異様な執着から腕を離さない。

 ぎちぎち、と凍りついた腕を軋ませながらそれでもなお、冬乃の首を締め上げ続ける。


「……っ、ぁ……!」


 息ができない変わりに冷気が暴れまわる。

 妖魔の腕は肩まで凍りつき、黒い皮膚へ白い霜が広がっていく。


「主様!!」


 白夜が叫び、助けようと手を伸ばすが妖魔たちが行く手を阻む。

 ゆきも護符を放ちながら必死に道を切り開こうとしていた。

 しずくは泣きそうな顔でこれ以上妖魔が侵入しないよう、結界を維持している。


「主さま……っ!」


 部屋の温度が、異常な速度で下がっていく。

 窓の外では、穏やかだった雪が突如として荒れ始めた。

 吹雪だ。冬乃の感情に比例して外の視界がどんどん白くなっていく。