氷の花嫁は愛を知らない

 赤い血が、白い雪へ飛び散り両親は痛みで顔をゆがめ崩れ落ちる。


『……っ』


 それは、幼い冬乃にとって残酷なことだった。


『お父様……?』


 理解が追いつかない。

 けれど雪の上へ倒れた自分の両親の姿を見た瞬間、本能的に分かってしまった。

 もう、優しい笑みを自分にむけてくれる日は訪れないのだと。


『お母様っ!!』


 駆け出そうとした身体をゆきが絶対に行かせまいと、さらに後ろから強く抱き止める。


『なりません!!』


 冬の葉自身を抱きとめる腕から離れようと必死にもがき暴れる。


『冬乃様!! 駄目です!!』

『やだ……っ!! ゆき、離して!!』

『き、ては、だめよ……』

『ふゆ、の。つよく……いき、るんだ』


 必死にもがき泣き叫ぶが、ゆきは離さない。


『冬乃様まで危険に晒されます!!』

『やだっ、お父様ぁ!! お母様ぁっ!!』


 その時、妖魔の腕がとどめを刺すように振り下ろされた。

 赤が散り、視界が真っ白になる。


 怖い。

 嫌だ。

 助けなきゃ。


 ──でも恐怖で動けない。


 冷たい。

 苦しい。

 怖い。


 その感覚が、一気に蘇る。