氷の花嫁は愛を知らない

 一人では負担の大きい祈りも、三匹の式神たちが支えることで均衡を保っている。


「今日も冷えますね、主様」


 ゆきが冬乃の髪を整えながら微笑む。


「うん」


 冬乃は小さく頷く。

 寒くはない。

 むしろ、雪の気配が濃い夜ほど、冬乃の霊力は静かに満ちていく。

 白夜が障子の外へ視線を向けた。


「……妙だな」

「白夜?」

「結界の流れが、少し乱れている」


 その瞬間ピキッと、どこかで、何かが軋むような音がした。

 しずくがびくりと肩を揺らす。


「……いまの、なに?」


 白夜の表情が鋭くなる。

「結界だ」


 低い声が部屋へ落ちた。

 冬乃は静かに目を伏せる。

 空気が、いつもと違う。
 普段なら屋敷を覆う結界によって遮断されるはずの妖気が、微かに内側へ入り込んでいた。


「主様、お務めを中断なさいますか?」


 ゆきが心配そうに尋ねる。