氷の花嫁は愛を知らない

 白夜は腕を組み、どこか不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「人間というものは厄介なのだ。手を差し伸べるふりをして、裏では自分の欲で動く者もいる」

「白夜」


 冬乃が静かに名を呼ぶ。

 すると白夜は少しだけバツの悪そうな表情をする。


「……申し訳ありません、主様。ですが、我の勘はよく当たるのです」


 ゆきはそんな二人を見つめながら、そっと湯呑みへ茶を注ぎ足す。


「伊織様は主様を気にかけてくださっていますよ?」

「だからこそ気に入らぬと言っているのだ」

「もう、素直ではありませんね」


 ゆきが困ったように眉を下げ、微笑む。

 冬乃は湯呑みを両手で包み込みながら、静かに雪を見つめていた。

 冷たいはずの湯気が、なぜか少しだけ心地よい。


***


 日が落ち、少し経つと遠くの本邸の方向から人々の声が聞こえてくる。

 どうやら客人が到着したらしい。

 普段は静かな屋敷が、今夜だけは少し騒がしかった。


「主さま、お客様なの?」

「そうみたい」