氷の花嫁は愛を知らない

 部屋の中央には白い布が敷かれている。その周囲には淡く青白い光を宿した護符が並び、鈴と枝垂れた白糸が静かに揺れていた。

 そこは、冬乃たちが祈りを捧げるための部屋だった。

 冬乃は静かに衣を脱ぎ、巫女装束へ袖を通す。

 それは人の手で織られたものではない。

 冬の神の加護を受けた布は雪のように白く、淡い銀の刺繍が光を受けて静かに煌めいていた。

 ゆきもまた白を基調とした衣へ姿を変える。

 しずくは小さな鈴を抱え、白夜は部屋の四方へ護符を配置していった。

 一人では負担の大きい祈りも、三匹の式神たちが支えることで均衡を保っている。


「今夜も冷えますね、主様」


 ゆきが冬乃の髪を整えながら微笑む。


「うん」


 冬乃は小さく頷く。

 寒くはない。

 むしろ、雪の気配が濃い夜ほど冬乃の霊力は静かに満ちていく。

 白夜が障子の外へ視線を向けた。


「……妙だな」

「白夜?」

「結界の流れが、少し乱れている」


 その瞬間ピキッと、どこかで、何かが軋むような音がした。