氷の花嫁は愛を知らない



 霜月家の離れには、一人の少女が住んでいる。


 本邸から少し離れたその場所は静かで、人の気配もほとんどない。

 使用人たちは必要最低限の世話だけを済ませると、長居はせずに去っていく。

 少女の名は、霜月冬乃(しもつきふゆの)
 彼女は幼い頃に両親を亡くし、天宮家という陰陽師のなかで有名にな家に引き取られた。

 かつては期待され、迎え入れられた存在だった。

 強い霊力を持つ家系の血を継ぐ子。
 その力は、天宮(あまみや)家に更なる繁栄をもたらす……はずだった。

 幼い頃の冬乃からは目立った霊力が感じられなかった。

 失望は、声にも態度にも強く表れはしない。
 けれど確かに、少女から人を遠ざけていった。

 怒鳴られることもなく、暴力を振るわれることもない。
 ただ、誰にも必要とされず、一種の虐待ともいえた。

 それでも、離れには常に三つの影が寄り添っている。

 白猫に蝶、そして雪豹。

 少女に仕える式神たちだけがこの静かな世界で唯一、彼女の傍におり、心の支えの一つでもあった。

 冬乃は今日も、雪の降る庭を眺めている。


 ──数時間後に自分自身が大変な目に合うとも知らずに。