ひとりぼっちのヒーローと、星になった宇宙人

 平日の昼間。
 学校にも行かず、部屋で惰眠を貪っていると、玄関のチャイムが鳴った。

 頭から布団を被り、わたしは居留守を決めこむ。
 どうせ、その内、鳴り止むだろうと思った。

「うるさいな……」

 たまらず、布団から這って出る。
 田舎暮らしの上に、築五十年が経っているうちには、インターホンがない。
 それと、わたし一人が使うにしては広すぎる。

 ほんの少し前は、そんなこともなかったのだけれど。

和葉(かずは)……?」

 そろそろと玄関の引き戸を開け、半身を覗かせる。そこに立っていたのは、セーラー服を着た、大きなポニーテールの少女だった。

「ひ、久しぶり」

 あれ以来、疎遠になっていた幼馴染に、どんな顔をすればいいかわからず、挙動不審になってしまう。

「せなって、そんなキャラだっけ? まぁ、元々、根暗っぽくはあったけど」

 開口一番、遠慮がない。
 そういうところは、昔の彼女と変わっていないようだ。

 その反面、わたし達の関係は、あの頃とだいぶ変わってしまったけれど。

「学校、なんで来ないのよ」
「……暑いから」
「じゃあ、なんでパーカー着てるの」

 問い詰められて、黙った。

 わたしにとって、パーカーは自分の身を守る手段。
 きっと和葉だって、わかってるんだろう。
 
「おばあさんのこと、まだ引きずってるんでしょ」
 
 ついたため息に、ポニーテールがしなだれる。

 両親のいないわたしにとって、たった一人の家族だったおばあちゃん。
 毎年、この季節になると、庭のひまわりが咲くのを楽しみにしていた。

「そりゃあたしだって、最初はびっくりしたよ。前に会った時は、普通に元気そうだったもん」

 高校二年生になる四月。
 おばあちゃんが亡くなった。

 何か疾患を抱えていたわけじゃなかったのに。
 朝起きたら、突然、心臓発作を起こして倒れて。
 そのまま帰らぬ人になった。 
 
「でも、だからって、一生、家に引きこもってるつもり? そんなの、せなのおばあさんは望んでないと思うよ。それに結星(ゆうせい)だって、もしここにいたら」
「和葉は、わたしに説教しにきたの?」
 
 一瞬、ハッとした表情になる。
 目をそらしがちに、和葉は否定した。

「そうじゃないなら、もう帰ってくれるかな? わたしは和葉みたいにタフじゃないんだよ」

 和葉の唇が、ぎこちない動きをする。
 けれど、向こうから反論が来ることはなかった。

 帰り際、なぜか、彼女に鍋を押し付けられた。
 一体、なんの当てつけだろう。
 そう思って、蓋を開けると、中には和葉お得意のカレーが入っていた。

 五人兄弟の長女で、昔から世話焼きな和葉。
 感情に流されやすいところはあるけれど、負けず嫌いで、人一倍、正義感が強かった。
 そして、なにより彼女は、わたし達のリーダーだった。