ひとりぼっちのヒーローと、星になった宇宙人


 空に流れ星が光った時。
 海で、大きな水飛沫が上がった。

「えっ」

 岩場に人が倒れている。
 わたしと同じか、ちょっと年上の男の子に見える。

「だ、大丈夫ですか!?」
「う、うぅーん……」

 軽く肩を叩くと、彼は目を開けた。

「立てますか?」
「ああ、うん」

 彼は全身ずぶ濡れだった。
 後、立ってみると、結構、背が高い。でも、その割にひょろひょろだから、風邪を引かないか心配になる。現にガタガタと震えているし。

「このパーカー、着てください。サイズ、絶対、小さいと思いますけど」
「そ、そんなの、君に悪いよ!」
「いいんです。夜の海、わたしは慣れてますから」

 薄手のパーカーを脱いで、彼の肩にかける。
 明らかに丈が足りていない。でも、多分、無いよりはマシだろう。

「あ、ありがとう」

 パーカにくるまり、彼がつぶやいた。
 改めてみると、なかなかの美少年だと思う。
 男子にしては、色白な肌といい、透明感のある青っぽい瞳といい、綺麗だけれど、どこか今にも消えてしまいそうな儚い感じがした。

「さっきは、びっくりさせちゃってごめんね。まさか、海に落ちるなんて思ってなくてさ」
「落ちた……?」

 周囲を見渡してみるも、辺り一面、海と砂浜が広がっているだけ。
 人が登れるような場所なんてないと思うけれど。
「実は僕ね、宇宙からやってきたんだ」

 右手を高く掲げて、彼は空を指差した。

「つまり、宇宙人ってことですか?」
「そう。僕が乗ってた宇宙船に、運悪く流れ星がぶつかっちゃってさ。急いで、緊急着陸したんだ」

 まぁ、結果、着陸じゃなくて、海だったけど。
 なんて、ひょうひょうとした様子で、彼は笑った。

 わたし達の出会いは、そんなとんでも話から始まる。

「へぇ」

 もちろん、本気で信じたわけじゃなかった。
 でも、彼があんまりにもナンセンスな嘘をつくものだから、逆に話に乗ってあげたらどうだろうって、ほんの出来心を覚えた。

「じゃあさ、君が乗ってきた宇宙船、わたしにも見せてよ」
「んー、あいにくだけど、それはできないんだ。僕ら宇宙人には、いくつか極秘事項があってね。決して、バラしてはいけないんだ」

 どうやら、そういう設定らしい。

「なら、せめて、君の名前を教えてよ。それくらいなら、いいでしょ?」
流星(りゅうせい)

 めっちゃ普通だった。
 けれど、彼と同じで、名前に星が入っているのは、神のイタズラか、はたまた何のめぐり合わせだろう。

「気軽に流星って呼んで。代わりに、僕も君のこと名前で呼んでいいかな?」
「いいよ、わたしはせな」
「せなちゃん」
 甘い声で呼ばれる。
 ちゃん付けは予想外で、思わず、ちょっとドキッとした。