遥か彼方の夜空には


 長野県からの旅行での帰り道でバスから降りた夜。 

 荷物を入れた大きなキャリーバック1つと肩から斜めがけのカバン状態で、下げてるペットキャリーを1つの荷物を持って歩き出して。
 この夜の道はあまり人も通らないけど、明るい街灯はついてるから少し安心する。
 急ぎ足で家に向かいながら、ペットキャリーの中に入っているペットに話しかける。

『ユエ、もうすぐ家に着くからね。疲れたと思うけどもうちょっと待ってて』

『ニャ〜〜〜〜』

 おとなしい声ですぐ返事をするのはボクが大好きな黒猫、ユエである。
 たまにはユエと旅をしたいと思って3日間旅行休み取ってから色々見て回った分。
 やっぱり帰りはかなり疲れてる感じがするな………。

 そう思いながら歩いてるとこ、道の曲がり角でドンッ!!と、誰かとぶつかった。


『あ、と。ゴメンな……『どこ見て歩いてんだクソババア!!!』……さい………』 


(…………て、クソババアですか!)


 顔一面に唾をかけられる勢いで罵声を浴びせられたあげく、髭だらけのビール片手に持った40歳前後のオジサンに【クソババア】と言われたよ…………。

(まあボクも30歳後半だけどさ……。
クソババアと言われていいのか、どうか。しかし、このオジサン。ビール飲みながら歩いてたのかもしれないのに、全然お酒臭くない………変だ。
なんか酔ってるというのと違う風に見えるし……。
このタイプと出会うのはすごく嫌な予感しかしない。
遠回りになるけど、回り右して来た道を戻ろう!)

 クルッ!

『それじゃー』

『まてこら、ぶつかってきたとこ痛むからなあ、金置いてけ』

 走り出そうとしたら腕をガッシリと掴まれて前に進めなくなってしまった…!


(うん、逃げ切れなかったよ!)


 内心、イライラを隠しきれないまま振り返る。


『はなして下さい!』

『金を置いていけって言ってるんだから置いていけよ』

『はなして!!』

『ふざけんな、金出せ!』


(しつこいしはなさないし、まったく話にならない…。ここまでくればもう無理だな)

 プチンとキレたボクはもう我慢できないと思い。

 息を口からスゥッ!!っと大きく吸い込んで、腹の底から大声で叫んだ。