ガヤガヤとした教室に入ると、すでに半数くらいは席が埋まっている。1年のときも同じクラスだったやつがいて「おー春田!よろしくー」と声をかけられた。軽く手をあげて、教壇の座席表をチェックする。
真ん中の列の一番後ろか…まぁまぁいいな。両隣と前の席は知らない人だった。
机にリュックをおろし、椅子に座った。左隣は本を読んでいるおとなしそうな女子だ。ちらと俺を見るが、何も言わず本に視線を戻した。
前の席の男子が振り返る。短髪の黒髪で、野球部かサッカー部といった感じだ。日焼けしていて身長が高く、ガタイがいい。
「オレ、西原裕貴。よろしくな!」
「春田麻人。よろしく。何部?」
「登山部!」
なるほどな。読みが外れた、というか思考が単純すぎた。西原はニカッと笑い、きれいに並んだ白い歯が見えた。
「春田は?」
「えーと……園芸部」
「へー意外!」
ちょっと言い淀んだ俺に、西原は遠慮なく言った。まぁ似合わないんだろう。自分でもそう思う。最初は部活に入っていたほうが進学に有利だろうと思ってやっていたが、思いのほか面白く、自分が咲かせた花を見ると心が和む。夏は地獄だが。
「意外と楽しいよ」
「いや、日焼けしてないからさ。肌すげー白いじゃん」
そうかな、と自分の頬を触った。確かに部活中は農家の女性がするような花柄でツバの大きい帽子をかぶっている。これはユニフォームのようなものだ。かぶらないと部活をさせてもらえないから。
そのとき、教室のうしろのドアがガラッと開いた。
隣の席の女子がそっちを向く気配を感じて、俺もつられて振り向く。あ、さっきの。
不機嫌そうな顔をして入ってきたそいつは、一つため息をついた。ドア付近にいた女子が「ゆうせい、ここだよ〜」といって、オレの右隣の席を指さした。
目が合ったと思ったら、なぜか3秒くらい、じっと見つめられた。何を考えてるか分からない。イケメンの真顔って怖いんだよな。
さっき見た座席表を思い出す。こいつが「悠生」か。
「はーい、席つけよー」
直後に担任が入ってきて、ガタガタと全員が席についた。ショートホームルームがあり、次は始業式だ。一斉に体育館へ移動する。教室から出るために悠生の後ろをノロノロ歩くと、後ろからとんと押され、悠生の肩に頬をぶつけてしまった。
「あ、ごめん」
「別に」
初めて声を聞いた。低音ボイスでやけに冷たい言い方だけど、イケメンって声までイケてるんだな。にしても、クールなやつだなー。
始業式が滞りなく終わり、教室へ戻る。
次のホームルームまでの休み時間。西原は別クラスの友達のところへ行くと言って出ていった。悠生の机の周りには、また女子が集まっている。
「悠生、1年間よろしくね」
「連絡先おしえて!」
「今日遊びに行かない?」
ひっきりなしに話しかけられるが、やはり曖昧に笑っているだけで返事をしない。なんとなく気になって、横目で見ていると、目が合ってしまった。ここで目を逸らすのも感じが悪いかと思い、二へっと愛想笑いをすると、また3秒ほど見つめられる。
なんだなんだ?困ってるんだから助けろよってことか?でもあいにく、俺には女子の集団に切り込んでいく勇気はない。用があれば話しかけられるけど、微妙に人見知りなんだ。直後にチャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた。
「すげーな、あいつ」
いつの間にか戻っていた西原が、振り返って小声で言った。ホームルームが始まり、新年度の連絡事項を済ませると、担任が手をたたいた。
「さーて、自己紹介するぞ!」
あちこちからブーイングがあがる…が、担任は有無を言わせないようだ。そうだよな。必須イベントだよな。
自己紹介、苦手なんだよな〜。そもそも得意なやついるのか?何しゃべったらいいか分からないし、無駄に声が震えるし。と思っていると、無難に名前と「よろしくお願いします」を言うだけの自己紹介が始まった。「彼女募集中〜」なんて言ってるのは陽キャ確定だな。
無難な自己紹介を聞き流していると、あっという間に俺の順番がきた。ドキドキしながら席を立ち、やや小さめの声を出す。
「春田麻人です。よろしくお願いします」
よし、声が震えだす前に言い切った。まばらな拍手の中「え」という驚きの声が聞こえた。
みんなの反応を見るに、俺にしか聞こえなかったらしい。立ったまま右隣を振り向くと、目を見開いて俺を見ている悠生がいた。
真ん中の列の一番後ろか…まぁまぁいいな。両隣と前の席は知らない人だった。
机にリュックをおろし、椅子に座った。左隣は本を読んでいるおとなしそうな女子だ。ちらと俺を見るが、何も言わず本に視線を戻した。
前の席の男子が振り返る。短髪の黒髪で、野球部かサッカー部といった感じだ。日焼けしていて身長が高く、ガタイがいい。
「オレ、西原裕貴。よろしくな!」
「春田麻人。よろしく。何部?」
「登山部!」
なるほどな。読みが外れた、というか思考が単純すぎた。西原はニカッと笑い、きれいに並んだ白い歯が見えた。
「春田は?」
「えーと……園芸部」
「へー意外!」
ちょっと言い淀んだ俺に、西原は遠慮なく言った。まぁ似合わないんだろう。自分でもそう思う。最初は部活に入っていたほうが進学に有利だろうと思ってやっていたが、思いのほか面白く、自分が咲かせた花を見ると心が和む。夏は地獄だが。
「意外と楽しいよ」
「いや、日焼けしてないからさ。肌すげー白いじゃん」
そうかな、と自分の頬を触った。確かに部活中は農家の女性がするような花柄でツバの大きい帽子をかぶっている。これはユニフォームのようなものだ。かぶらないと部活をさせてもらえないから。
そのとき、教室のうしろのドアがガラッと開いた。
隣の席の女子がそっちを向く気配を感じて、俺もつられて振り向く。あ、さっきの。
不機嫌そうな顔をして入ってきたそいつは、一つため息をついた。ドア付近にいた女子が「ゆうせい、ここだよ〜」といって、オレの右隣の席を指さした。
目が合ったと思ったら、なぜか3秒くらい、じっと見つめられた。何を考えてるか分からない。イケメンの真顔って怖いんだよな。
さっき見た座席表を思い出す。こいつが「悠生」か。
「はーい、席つけよー」
直後に担任が入ってきて、ガタガタと全員が席についた。ショートホームルームがあり、次は始業式だ。一斉に体育館へ移動する。教室から出るために悠生の後ろをノロノロ歩くと、後ろからとんと押され、悠生の肩に頬をぶつけてしまった。
「あ、ごめん」
「別に」
初めて声を聞いた。低音ボイスでやけに冷たい言い方だけど、イケメンって声までイケてるんだな。にしても、クールなやつだなー。
始業式が滞りなく終わり、教室へ戻る。
次のホームルームまでの休み時間。西原は別クラスの友達のところへ行くと言って出ていった。悠生の机の周りには、また女子が集まっている。
「悠生、1年間よろしくね」
「連絡先おしえて!」
「今日遊びに行かない?」
ひっきりなしに話しかけられるが、やはり曖昧に笑っているだけで返事をしない。なんとなく気になって、横目で見ていると、目が合ってしまった。ここで目を逸らすのも感じが悪いかと思い、二へっと愛想笑いをすると、また3秒ほど見つめられる。
なんだなんだ?困ってるんだから助けろよってことか?でもあいにく、俺には女子の集団に切り込んでいく勇気はない。用があれば話しかけられるけど、微妙に人見知りなんだ。直後にチャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた。
「すげーな、あいつ」
いつの間にか戻っていた西原が、振り返って小声で言った。ホームルームが始まり、新年度の連絡事項を済ませると、担任が手をたたいた。
「さーて、自己紹介するぞ!」
あちこちからブーイングがあがる…が、担任は有無を言わせないようだ。そうだよな。必須イベントだよな。
自己紹介、苦手なんだよな〜。そもそも得意なやついるのか?何しゃべったらいいか分からないし、無駄に声が震えるし。と思っていると、無難に名前と「よろしくお願いします」を言うだけの自己紹介が始まった。「彼女募集中〜」なんて言ってるのは陽キャ確定だな。
無難な自己紹介を聞き流していると、あっという間に俺の順番がきた。ドキドキしながら席を立ち、やや小さめの声を出す。
「春田麻人です。よろしくお願いします」
よし、声が震えだす前に言い切った。まばらな拍手の中「え」という驚きの声が聞こえた。
みんなの反応を見るに、俺にしか聞こえなかったらしい。立ったまま右隣を振り向くと、目を見開いて俺を見ている悠生がいた。
