ずっと一緒に


◆◆◆

「えー、若月と須賀についてだが、今も警察が捜索中だ。皆も、何か知っていることがあったらすぐにでも知らせるように」
 担任教師の気だるげな口ぶりに、クラス中がひそひそと、噂話を繰り広げた。
 2人がいなくなった日、校内を走って行く、異様な姿の俊樹を、何人かの生徒が目撃していた。
 遠目にも明らかに、体に何かがついているような、のしかかっているような、あるいは、何かが体に生えているような、妙な姿だった。
 あれは何だったのか?
 もしかして、若月って人じゃなかったんじゃないか?
 中途半端に変身してたのが解けて、あんな姿になってたんだよ。
 それか、化け物が実は寄生していて、それが正体を現した、とか!
 得意げに、ファンタジーめいたことを言う男子がいれば、まるで違う意見を語る女子たちもいる。
 あの2人って、ぜんぜん違うタイプなのに、やたらと一緒にいたよね。
 毎朝一緒に登校してたし、帰る時もよく一緒になってたし。
 距離感とか、空気感がさ、ただの友達って感じじゃなかったし……。
 ってかあの2人、幼馴染だったらしいよ。
 噂にはいくつもの尾ひれがつき、その上で流れ続けていた。
 どれもこれもが眉唾物で、真実を核にした戯言ばかりが、クラス内外を問わず、飛び交っていた。
 それらを耳にしながら、夕は1人、空席となった2人の机を見つめていた。
 きっと、彼らには、彼らにしか分からない世界があった。
 時折、会話の端々で感じる疎外感。
 どちらかと話している時に向けられていた、嫉妬と羨望が入り混じり、こちらを値踏みするようだった視線。
 きっと、互いが互いのことを大切に想っていて、想い過ぎていたがゆえに、表に出すこともないままだったのだろう。
 もしそれがきっかけでいなくなってしまったのであれば、2人に声をかけたりしなかったのに、と夕はため息を吐く。
 いなくなった日の翌日、夕は1人で、陽道と待ち合わせていた場所に向かった。
 当然のことではあったけど、彼は来なかった。
 もうすぐだという俊樹の誕生日プレゼントを選ぶ手伝いを頼まれていたのだ。
 地元を紹介してくれるのは、そのついでだった。
 ……2人と、もっと話してみたかった。
 仲良くできそうな2人だったのに、もう、会えることはきっと、ない。
 不思議と、そんな気がしてしまった。
 きっと今頃、彼らは誰の目にも届かないような場所に行ってしまって、2人だけの時間を過ごしているはずだ。
 そして、幸せに、過ごしていることだろう。
 せめてそうであってくれと願いながら、夕はクラスメイトたちの雑談に交じっていく。
 放課後、近隣の散策でもしようかな、なんてことを考えながら。
 どこがいいだろうか。
 そういえば、近くに大きな森があるらしい。
 住宅街を抜けた先、田畑が広がる道を歩いて行くと、つくのだとか。
 楽しそうに俊樹が語っていた顔を思い出しながら、夕は次の休みにでも行ってみようと、心に決めるのだった。