木に飲まれていく自分のことではなく、誰もいないはずの空間を楽しそうに見つめているのは、夢で見た、あの姿そのものだった。
どこにそんな力が残っていたのか、体のどこも動かせやしないと思っていたのに、俊樹は咄嗟に顔を上げて、声のした方を見てしまった。
そして、目を見開いた。
「急にどこに行くのかと思ったぜ……でも、見つかって、良かった」
どうして、と言葉を口にすることもできないまま、ぱくぱくと、口だけを動かす。
広場の入口、道なき道の先から出てきたのは、間違いなく、陽道だった。
走って来たのだろう、額に汗が浮いているし、息も荒い。
「……俺の声、聞こえてるか? 俊樹」
目の前にまで歩いて来て、彼は片膝をつくと、俊樹の目を真っ直ぐに見ながら言った。
すでに視界も霞み始めていて、表情こそあまり分からなかったが、それでも、俊樹は必死に、頷いて返した。
もうほとんど人としての体は残っておらず、大半が根に侵食されていたが、陽道の声だけは、やけにはっきりと聞くことができていた。
「こんなになっちまったら、さすがに、また折るぐらいじゃ、意味ないよな……」
試しに、といった具合に、陽道は俊樹から生える木に手をかけたが、折ることはたやすくできても、成長を阻害できる程には除去できそうになかった。
言っている間にも成長を続ける木を前にして、陽道はすぐに首を横に振った。
「まあ、そうだろうな、とは思ってた。学校で……あの時、俺と夕の会話を聞いて、こうなっちまったのか?」
俊樹は頷きたくなかった。
そうとしか考えられないけど、そうだと彼の前で認めるのは、どうにも、気恥ずかしかった。
こんな姿になってまでも、友達の前で見栄を張ってしまう自分に、俊樹は内心苦笑した。
何も答える様子のない俊樹に対し、陽道は優しく微笑む。
「まあ、言いたくないよな。分かるよ。俺だって同じ立場だったら、あんま言いたくない」
それは、俊樹からしてみれば、意外な答えだった。
いつも陽道は、気を使うことはあっても、自分のために黙るようなことはあまりしてこなかったと思っていたから。
「俺だってさ、俊樹に言えないようなこと、いっぱいあったんだ。夕と最初に話してた時、趣味のことで盛り上がってるのとか見てさ……正直、俊樹を取られるんじゃないか、って思ってたよ」
陽道が? 本当に?
聞き返したくても、やはり声は出ないが、表情には出ていたらしい。
俊樹の顔を見て、陽道は肯定するように頷いた。
どこにそんな力が残っていたのか、体のどこも動かせやしないと思っていたのに、俊樹は咄嗟に顔を上げて、声のした方を見てしまった。
そして、目を見開いた。
「急にどこに行くのかと思ったぜ……でも、見つかって、良かった」
どうして、と言葉を口にすることもできないまま、ぱくぱくと、口だけを動かす。
広場の入口、道なき道の先から出てきたのは、間違いなく、陽道だった。
走って来たのだろう、額に汗が浮いているし、息も荒い。
「……俺の声、聞こえてるか? 俊樹」
目の前にまで歩いて来て、彼は片膝をつくと、俊樹の目を真っ直ぐに見ながら言った。
すでに視界も霞み始めていて、表情こそあまり分からなかったが、それでも、俊樹は必死に、頷いて返した。
もうほとんど人としての体は残っておらず、大半が根に侵食されていたが、陽道の声だけは、やけにはっきりと聞くことができていた。
「こんなになっちまったら、さすがに、また折るぐらいじゃ、意味ないよな……」
試しに、といった具合に、陽道は俊樹から生える木に手をかけたが、折ることはたやすくできても、成長を阻害できる程には除去できそうになかった。
言っている間にも成長を続ける木を前にして、陽道はすぐに首を横に振った。
「まあ、そうだろうな、とは思ってた。学校で……あの時、俺と夕の会話を聞いて、こうなっちまったのか?」
俊樹は頷きたくなかった。
そうとしか考えられないけど、そうだと彼の前で認めるのは、どうにも、気恥ずかしかった。
こんな姿になってまでも、友達の前で見栄を張ってしまう自分に、俊樹は内心苦笑した。
何も答える様子のない俊樹に対し、陽道は優しく微笑む。
「まあ、言いたくないよな。分かるよ。俺だって同じ立場だったら、あんま言いたくない」
それは、俊樹からしてみれば、意外な答えだった。
いつも陽道は、気を使うことはあっても、自分のために黙るようなことはあまりしてこなかったと思っていたから。
「俺だってさ、俊樹に言えないようなこと、いっぱいあったんだ。夕と最初に話してた時、趣味のことで盛り上がってるのとか見てさ……正直、俊樹を取られるんじゃないか、って思ってたよ」
陽道が? 本当に?
聞き返したくても、やはり声は出ないが、表情には出ていたらしい。
俊樹の顔を見て、陽道は肯定するように頷いた。
