ずっと一緒に

 だからこそ、余計に、残念で仕方がない気持ちだった。
 さっきの話は、どういうことなのか。
 自分には内緒で2人で集まって、何をしようとしていたのか。
 全てを聞きたかったが、今、俊樹はそれどころではなかった。
 体中に走る痛みは凄まじく、立っていることすらも辛い。
 それでも、このまま居座ることも、してはいけないと思っていた。
 取り囲まれでもすれば、逃げることもできない。
 少しすれば体を蝕むこの木はもっと成長していき、やがて、自分は動くこともできなくなるだろう。
 そうなった時、きっと、陽道や夕は助けようとしてくれるはずだ。
 ……今の俊樹には、それがもう、耐えられそうになかった。
 自分のことを排したいのか、それとも、助けたいのか、分からない。
 そんな中で、助けに入ろうとした2人にまで、被害が及んだりしたら?
 あるいは、この状況を前に、2人が助けてくれなかったら?
 どちらが起きたとしても、俊樹には、耐え難い出来事になる。
 そうなってしまったら最後、もう、昨日の夜のように、希望を持つことすらも、できそうにないと思えた。
 だからこそ、俊樹が取れる行動は、ただ1つだけだった。
「俊樹!」
 陽道の声が届くよりも早く、俊樹は走り出していた。
 足が痛い。
 体のあちこちが痛い。
 どこもかしこも、酷い痛みだ。
 伸び続ける木の枝が、少しずつ、重たくも感じられてきた。
 それでも、俊樹はひたすらに、走り続けた。
 廊下に出ている生徒たちが、俊樹の姿を見て、慌てて道を譲る。
 ぶつかりそうになりながら、時には枝が何かに当たり、その度にさらなる痛みに襲われながら、それでも、止まることなく必死に走った。
 このまま走り続けて……走り続けて、どこに、行けばいいのだろうか?
 誰かを頼れるような状況でもないし、頼れるのであれば逃げる必要もない。
 どこか、人目につかないような場所に、逃げ込むべきだ。
 誰もいない、誰も入って来られない、誰も存在を知りながらも入ろうとしない、そんな、場所に。
「……そう、か」
 1つの可能性に辿り着いて、俊樹は独り言ちる。
 全ては、このためだったのか?
 あるいは、もっと、別の理由があったのか。
 真相は何も分からない。
 しかし、もう、思いつくことといえばそれぐらいしかない。
 俊樹は学校を出て、そのまま、ひたすらに足を動かした。
 住宅街を抜け、人気のない方へと進んで行き、坂を上っていった先、田畑ばかりが広がる土地を、ひたすらに、走り続けた。
 やがて見えてきたのは、荒れ果て、一塊のようになっている雑木林。
 夢で何度も見てきた、かつての秘密基地。
 誰かが入り込むような心配もない、誰かに迷惑をかけるようなこともない、そんな場所。
 近づいて行くと、記憶よりもその林は、ずっと小さく見えた。
 田んぼの脇を進み、いつも入っていた場所から道とも呼べない道を進み、草木を掻き分けて行った先で、案の定、よく見知った顔と出くわした。
 ずっと夢で見続けていた、夕によく似た姿の少年が、あの邪悪な笑みを浮かべて、嬉しそうに待っていたのだった。