ずっと一緒に

「あ゛っ、ぁぁぁぁ゛っ!」
 途端に、遅れてやってきた凄まじい痛みが、俊樹の腕を襲った。
 痛い、痛い、痛い、痛い!
 ズキズキと、響くような痛みが折れた根本の方から腕を伝ってやってくる。
 あり得ないはずなのに、根元が熱を帯びているかのようだった。
 触れても体温なんて感じない木肌に、血が通っていたかのような、そんな錯覚さえ、感じてしまう。
 血が流れているわけでもないのに、根元が濡れているような気がして、目を向けるもやはり、そこからは何も漏れ出たりはしていなかった。
 激しく続く痛みは止まらず、俊樹は耐えられず、ベンチの下に転がった。
 座っていることもできそうにないぐらいの、感じたこともないような痛みだった。
 二の腕に手を回そうとして、軽く触れた俊樹は叫びながら手を離した。
 折れた跡になっている部分は、少しでも触れると、大きく開いた傷口を引っ掻いているかのようで、とても触れそうになかった。
 逃れようのない、どうすることもできない痛みを味わいながら、俊樹はベンチに座ったまま何も言わない陽道を見上げていた。
 ちょうど、頭上にある街灯が光を放っているせいで、陽道の顔は逆光になり、見えなくなっていた。
 彼は彼で、折った枝を握り締めたまま、ただ静かに、俊樹を見下ろしている。
 何も言わずにこちらを見つめる姿が、酷く、恐ろしかった。
「なんで、急に、こんな……」
 訳が分からなかった。
 突然に、どうしてこんなことをしたのか。
 この枝に触れれば痛みが走ることは、わざわざ確認したぐらいだったというのに。
 もしその枝を折ったりすれば、こうなることは、簡単に想像がついたはずなのに。
 なんで、と涙を流す俊樹に、陽道はベンチを降りて片膝をつくと、そっと痛がる俊樹の頭を撫でた。
 慈しむような、とても優しい手つきだった。
「ごめんな、痛いよな……」
 俊樹の顔を覗き込むようにした、陽道の目から、パタパタと涙が落ちてきた。
 苦痛に喘ぐ俊樹以上に苦しそうな顔で、陽道は俊樹を見つめていた。
 降りしきる雨のように、次々に落ちて来る彼の涙は温かく、まるで、春先の天気雨のようだと、俊樹は場違いに思ってしまった。
「でもさ、これでまた、普通に生活できる、よな。また生えてくるかもしれないけどさ」
 なんとか口元に笑みを浮かべて、励ますように言ってはいるが、陽道の声は震えていた。
 ああそうか、とその姿を見て、俊樹は理解する。