『お待たせ、ついたぞ』
少しして、陽道から届いたメッセージに、俊樹はスタンプを返して、そっと自室を出た。
玄関にまでやって来て、深呼吸を1つ。
枝は結局どうすることもできず、スウェットを脱ごうとすると、突き破った枝が何度も引っかかり、あまりにも痛いのでやめてしまった。
破れた左袖はハサミで切り取って、片腕だけがノースリーブの状態になっていた。
寝巻のまま、上着を着ることもできない今の自分に、嫌気がさす。
そして、この姿を陽道に見せることも……とても、恐ろしかった。
でも、ここまできたら、もう止まることはできない。
彼に全てを打ち明けて、共に悩んでもらいたい。
玄関の扉が、いつもよりずっと、重たく感じた。
家族を起こさないように、なるべく静かにドアを開けて、外に出る。
乾きかけの道路や家々の姿に、雨上がりのどこか清潔な感じがして、俊樹は少しだけ、心が晴れるような気がした。
道路の方を見ると、家の前にある街灯の下に、ラフな格好の陽道が立っていたが、彼は出てきた俊樹の姿に、すっかり固まっている様子だった。
目を丸くして、半開きの口が閉じなくなっている。
無理もない反応だ、と俊樹は小さく笑って、門扉を開けた。
「お待たせ」
反応のない陽道に小さく声をかけると、彼はようやく我に返ったようだったが、続けて、繰り出す言葉を探しているようだった。
「あ、えっ、と、うん。とり、あえず、行く、か?」
「そうだね」
どこに行く、と決めているわけでもないが、2人は並んで歩き出す。
空はまだ雲がかかっていて、星が見える気配もなさそうだった。
薄っすらと雲越しに見える月だけが空に浮かんでいて、頼れるのは点々と存在している街灯の明かりだけだ。
煌々と夜道を照らし出す光の下、雨に濡れていない唯一の枝木が、俊樹の歩みと共に微かに揺れ動いていた。
しばらくの間、2人はただ黙って、歩き続けた。
時折、気になる様子で陽道が目を向けてはくるものの、何か言ってくるようなことはなく、俊樹は俊樹で、何も言葉を発さないまま、2人はただただ、歩き続けていた。
しばらく進んでいると、少しして、密集する住宅の間に、開けた場所が現れた。
昔から、よく遊んでいた公園だ。
「そこ、入ろうか」
「あ、ああ」
俊樹が唐突に言うと、陽道は頷いて、そのままついてきた。
