ずっと一緒に

 もっと危機感を持つべきなのだろう、本来は。
 慌てて大騒ぎをして、病院に行くなり、両親に相談するなり、友達を頼るなり、すべきなのだろう。
 でも、最初の時点で、そういうことはしなかった。
 なぜか、そうすることで、陽道が自分から離れて行ってしまう気がしたから。
 しかし今にして思えば、そう考えさせることこそが、あの少年の――夕の作戦だったのでは、なんてことさえ思う。
 夢の中で見た、邪悪な彼の笑みを思い出し、俊樹は歯噛みした。
 こちらに向けられる、愉悦と優越が入り混じった、煽るような笑顔。
 かつての陽道との思い出を、わざわざ見せつけてきたのだろうか。
 そう、彼と陽道は、幼い頃に出会っていた。
 俊樹も知らないところで彼らは邂逅していて、そこで知った知識と場所を、陽道は俊樹に教えてくれていたのだ。
 あの夢に見た出来事が、本当に過去、起きたことなのかは分からない。
 でも、わざわざ見せてきたのだ、捏造されたものとは考えにくい。
 悔しがらせたい意図があるというのであれば、なおさらだろう。
 知らないところで、陽道と夕はずっと会っていたのだ。
 2人だけのものだと思っていた秘密基地は、2人だけのものなんかじゃなかった。
 2人だけで楽しく過ごしていたと思っていたのは、自分だけだった。
 あまりに滑稽なことだと思うと、なんだか、涙が出て来そうだった。
 ようやく電源が入ったスマホに、大量の通知が並ぶ。
 見てみると、ほとんどは陽道からのものだった。
 大量のメッセージと、着信履歴。
 最初は数分のうちに一気に、そして、その後は1時間置きに、陽道からは様々な心配のメッセージが届いていた。
 眠りにつく直前の、突き放すようなやり取りを思い出し、俊樹は心が痛んだ。
 陽道にこんな心配をさせたいわけではなかったのに、つい、夕のことが話題に出てきてしまって、酷い態度を取ってしまった。
 謝らないと、と思いながらスマホを操作していると、もう1つ、見知らぬアカウントからのメッセージが届いているのが目に入った。
『やっほー、夕だよ』
『体調はどう? しっかり休んで元気になってね!』
 愛らしくデフォルメされたカブトムシのスタンプが最後に貼り付けられた、夕からのものだった。
 ……なんて、白々しい。