ずっと一緒に

 パッと陽道の顔が喜色に満ちたが、すぐに何かに気が付いた様子で、陽道は小さく首を横に振った。
 不思議そうにしている少年に、陽道はおずおずと言う。
「さっき言ってたさ、友達と、また来てもいいかな」
 少年は少し考えるような仕草をしてから、深く頷いた。
 ホッとした様子で、陽道は笑う。
「あいつ今、風邪引いてるからさ。治ったら一緒に来るよ。そしたら、ここのこと教えてさ、一緒に虫、集めるんだ」
 嬉々として語る陽道に、少年は変わらず、仮面のような笑顔を浮かべたまま、静かに頷いていた。
 ああそうか、それで、あの日、陽道は僕を誘って、この場所に連れてきてくれたのか。
 勿体ぶって、何度も秘密の場所があると言っていて、なかなか教えてくれない中、7月の終わりになってようやく、木の上にすごい場所がある、って言って。
「……今日のところは、他の遊びがしたいな。良かったら一緒に遊ぼうぜ!」
 陽道に誘われて、少年はこくりと頷き、不意に、陽道から目を逸らした。
 視線を向けた先にいたのは、俊樹だった。
 この空間をただただ眺めていた俊樹に向かって、少年は笑みを深くして、面白そうに笑って見せた。
 愉悦の入り混じった、挑発的な笑みだった。
「よし、じゃあ最初は何やろっかなー」
 木を降りながら、楽しそうに遊びを考える陽道を見て、そして、優越感に浸るような顔をした少年を見て、俊樹は腸が煮えくり返るような気持ちになった。
 僕の知らない間に、僕が風邪を引いている間に、陽道を独り占めにしていた?
 それを見せつけるためだけに、こいつは、こんな夢を見せてきたのか?
 幼い頃の思い出を蒸し返してきたのも、僕の腕に木を生やして困らせてきたのも、全てはこのため?
 遊び始める2人の姿が、薄っすらと消え始める。
 周囲の景色が白く染まっていき、少しずつ、夢の終わりが近付こうとしていた。
 少年は遊びながら、もう1度、俊樹の方に笑みを投げた。
 あまりに無邪気で、邪悪で、最高に楽しそうなその笑顔は、やはりどう見ても、夕によく似ているのだった。