ずっと一緒に

 子供の足だったからか、あるいは、遠目には比較的近くにあるように見えたからか、思っていたより多くの時間をかけて、陽道は目的地の前に辿り着いた。
 鬱蒼とした林だった。
 長く放置されていることは間違いなく、古びた木々の表面には苔が生え、蔦が這っていた。
 枝も整えられたような形跡はなく、窮屈そうに伸びたいくつもの葉が、太陽の光を奪い合っている。
 長い間、人の手が入っていないのは明らかで、中に入れそうな場所も、全く見当たらない程だった。
 獣道のような、少しでも何かが通った形跡すら存在しない。
 かろうじて、陽道が立つ場所から道が続いていたのかもしれない、と思わせるような道の名残らしきものはあった。
 しかしそれも、多少の石が地面に敷かれているように見えたから、という程度のもので、もはや並んで埋まる石たちは下草に埋もれ切り、道とはとても呼べない代物と化していた。
 林であるというのにも関わらず、あまりにも深いその場所は、奥の様子を見通すことも全くできない程に暗かった。
 中にどんな続き方をしているのか、まるで見当もつかない。
 ただただ、木々が生えていて、雑草が好きに伸びていて、蔦や苔が大地を侵食して、緑に支配された空間が、とにかく広がっているように見えた。
 しかし不可思議なのは、これだけ多くの自然が猛威を振るっているというのにも関わらず、下草も、蔦も、枝葉でさえも、ある一定の範囲を越しては、決して外に出ようとはしていなかったことだ。
 まるで、決められた土地があり、そこから出ることができないかのように。
 あるいは、これらの木々が、範囲を定めているかのようにさえ思わせた。
 円を描くかのように、一定の場所を草木が占めていて、専有を示しているかのような、そんな雰囲気があった。
 自分の背丈よりずっと大きな木々が暗がりを作っている様子は、当然ながら最初に見た時はあまりにも恐ろしく、陽道がいなければ入りたがらなかっただろう。
 1人でいる陽道も、生唾を飲んで木々を見上げていたが、やがて、意を決した様子で中へと入って行った。
 たくさんの枝葉が作り出す大きな日陰のせいで、林の中はとても涼しかった。
 湿った空気が籠っており、下草はどれも露に濡れていて、通るだけで足元が大きく濡れてしまう。
 蝉の声は煩いぐらいにするものの、それ以外の音は締め出されたように聞こえなくなり、車が走る音や、人の声すらも、この場所には入ってこれないような気がした。
 実際、この場所で遊んでいるのを邪魔されたことは1度もない。
 大人が入って来て注意することも、他の子供たちが見つけて入って来るようなことも、1度たりとも経験したことがなかった。