ずっと一緒に

 当時の出来事を、どんどんと思い出していく。
 あの頃は陽道の方がよほどアクティブで、俊樹はどちらかというと、実際に虫を捕まえることよりも、図鑑で情報や生態について知る方が好きなぐらいだった。
 いつの間にか立場は逆転してしまったし、今では虫を好きなのは俊樹だけになってしまったが、この頃は毎日のように2人で生き物を探して歩き回っていた。
 毎日のように図鑑とにらめっこして、日本にいるなら探してみようと笑い合って、必死に探しても見つけられなくて、でも、偶然知らない虫に出会っては大いにはしゃいだりして……とても楽しかった毎日を思い返して、俊樹は自然と口元が緩む気がした。
 そんな素晴らしかった日々の中、たまたま1人で行動していた陽道が、あの場所を見つけたのだと、この映像で理解した。
 と同時に、どうして、とも思う。
 自分のものでは決してない、過去の出来事。
 記憶の再現であるなら、まだ理解はできる。
 なかなかあることではないけれど、昔に体験したことを反芻するように、夢に見るような時はあるからだ。
 しかし、今見ているこれは、どう考えても、俊樹の記憶ではない。
 ましてや、陽道のものでもないだろう。
 第三者的に彼の姿を捉えているこの光景は、明らかにおかしい。
 誰かの記憶だと考えるのが自然なのかもしれないが、だとしても、それを今、俊樹が夢に見ているのは、どういうわけなのか。
 これもまた、超常的な体験の1つ、ということになるのだろう。
 そう考えると、なんだか、目の前に広がっている景色が、恐ろしく思えてきた。
 他者の記憶を強制的に見せられているような、この状況。
 これも、腕から生えた木の延長線上にある怪奇現象、ということなのだろうか。
 自らの体に起きている変化。
 何かを、体に潜り込まされているような、そんな、不気味で、背筋の寒くなるような感覚。
 悍ましい体験のようなものを味わっている、そんな不気味さ。
 このまま黙って見ているばかりで本当にいいのかと、不安な気持ちも浮かんできたものの、身動きが取れるわけでも、何か声を発することができるわけでもない。
 俊樹は諦めて、この夢が、どこに行きつくのかを黙って見守ることにした。
 先程から動く気配すらない陽道が気になっていたが、少しして、不意に彼は何かに大きく頷くと、駆け足で道を外れ始めた。
 車道を横切って、田んぼ横の道に入るとそのまま、あぜ道を突き進んで行く。
 一心不乱、というのがよく似合う程に彼はひたすら道を進み、田んぼの中にある雑木林へと向かって行った。