ずっと一緒に

 痛みや苦しさが、心をより沈めていることを実感しながら、ため息を吐いて、俊樹は自宅へと向かった。
 とぼとぼと、雨に濡れたアスファルトの上を、1人で歩く。
 いつもの通学路派こんなに距離があっただろうか、なんてことを考えて、すぐに理由に思い至る。
 普段は、陽道と一緒だからだ。
 1人では長く感じる道も、彼と他愛もない話をしていると、いつの間にか目的地にたどり着いていた。
 いつもそうだから、慣れ切ってしまった感覚が狂うと、どうにも、心にくる。
 体の中に籠った熱を逃がすように息を吐くと、6月だというのに息が白くなって見えて、寒いわけだ、などと妙に納得してしまった。
 実際には疲れ切った目に見えた幻覚だったのかもしれないが、どうあれ、カーディガンを着るのにちょうどい良い日で助かった、なんてことを思った。
 傘を持つ右手がだるくなってきたが、持ち替えることはできない。
 相変わらず左腕は鈍く痛みを放っていて、少しでも二の腕を上げようとすると、引き攣るような痛みが走った。
 今日は特に、酷い。
 理由は顕著だが、それにしたって、初めて味わうような痛み方だった。
 血が出てこないだけ、マシと思うべきなのだろうか。
 二の腕からの痛みが強いおかげで、風邪特有の関節の痛みなどは、多少感じても気にもならなかった。
 おかげで歩ける。
 体に力は入らないので、いつもよりずっと歩調は緩やかなものの、それでも、前に進むことはできた。
 中身のあまり入っていない鞄すらも重たく感じる道を進んで、ようやく、自宅の近くにまでやって来ることができた。
 このまま坂を上っていけば、1番上に俊樹の家はある。
 坂から続く道の先を進んで行けば、突き当りが陽道の家だ。
 昔何度か、この道を通って陽道の家にまで行ったことがある。
 と言っても、中に入ったことはない。
 陽道の家は父子家庭で、アパートの1室を借りて生活している。
 家の中で遊んではいけない、と陽道はお父さんに言われていたらしいが、今にして思えば、近所迷惑を考えてのことだったのだと理解できる。
 陽道は、あの家は家賃も安く、近所の人にも良くしてもらっているから、余計に気を使っていたのだろう、と言っていた。
 陽道のお父さんとはほとんど会ったことがない。