ずっと一緒に

 2人に何か言うよりも早く、陽道の手が伸びてきて、俊樹のおでこに触れた。
「……熱があるな。朝から体調悪そうだったし、風邪でも引いたか?」
 思い返してみれば、カーディガンを着ようと思ったのは腕を隠す意図もあったが、肌寒さを感じたからであり、朝の時点でそんな兆候はあったのかもしれなかった。
 腕の事ばかりが気になり過ぎて、それ以外の体の変化に気付けなかった部分は間違いなくあっただろう。
 俊樹は開きかけていた弁当を包み直して立ち上がった。
「保健室、行ってくるよ」
 か細い声で言う俊樹に、2人も立ち上がる。
「1人じゃさすがに心配だって」
「俺が運んで行こうか?」
 ありがたい申し出ではあったが、俊樹は静かに首を横に振った。
 普段であれば喜んでお願いしているところだったが、今は腕のこともあるため、背負われたりしたら、意図しない形で木肌に触れてしまうかもしれないのが怖かった。
 そうなったら、わざわざカーディガンを着てまで隠した意味がなくなってしまう。
 いつもよりずっとゆっくりと慎重に歩いて、俊樹は1階にある保健室を目指した。
 立ち上がるとさすがに気だるさが一気に押し寄せてきて、数歩歩くだけでもかなりのしんどさだった。
 とはいえ、全く歩けない、というわけでもない。
 頑張ればいつも通りの歩調でも歩けるだろうし、少し休めばたぶん、すぐに良くなる。
 そんなことを考えながら廊下を進み、手すりをしっかり掴みながら階段を降りた。
 足元は多少以上に覚束ないので、2人に強がった手前、転がり落ちるようなことは気を付けなくてはいけない。
 こんな形で2人にさらなる心配をかけるのは、さすがに本意ではないのだ。
 それなりに時間をかけて階段を降りきった俊樹は、そのまま薄暗い廊下を進んで保健室に向かった。
 遠くから聞こえる誰かの楽しそうな笑い声を聞くと、どこか遠い世界にやってきたような錯覚に陥りそうになる。
 昼休みだからこそ、元気であれば自分も今頃、2人とご飯を食べながら楽しく過ごせていたのに、と疎外感を抱きつつ、俊樹は保健室の扉をノックし、中に入った。
「あら、顔色悪いわね。どうしたの?」
 どうやら先生も食事中だったらしく、食べかけのお弁当を置いて駆け寄ってきてくれた。
 申し訳ないなと思いつつ、俊樹は力なく返す。
「ちょっと、熱があるみたいで……」
「そう、じゃあとりあえず計ってみましょうか」
 体温計を手渡され、脇に挟もうとして、左腕の突っ張るような痛みに苦戦する。